遊技障害(いわゆるぱちんこ依存)の疑いについてのあれこれメモ
人にとって、娯楽は必要ですか?
必要です。
「娯楽」は楽しいだけでなく、その行為や行動を思い描くだけで、ワクワクする、楽しくなる行為です。「やる気」を生みだす脳の線条体を活性化させるのが「娯楽」です。そして線条体が活性化すると、記憶効率がよくなったり、スキルを身につけやすくなったりする。
ですから、仕事や家事、学習も「娯楽」であるべきですが、これらは難行苦行だったりする。だから、暮らし、仕事とは別に、しっかり「娯楽」「楽しみ」の時間をつくることが、生活のハリを生み、やる気の維持はもちろん、健康にも役立ちます。
問題ある依存状態はなぜおきるのでしょうか?
「線条体」はドーパミンによって活性化します。精神刺激薬やアルコールでもドーパミンの分泌が増すので、「楽しさ」や「快感」が依存を引き起こすとよく説明されます。しかし、これはずいぶん雑な説明です。
「啓発週間でのギャンブル等依存症の脳的説明、ちょっと考え直した方がいいんじゃないか」 https://bblog.sso.biglobe.ne.jp/cms/article/edit/input?id=39421536
「ぱちんこ」での大当たりや勝ちは確かに楽しいですが、大当たりまでのハマりや負けといった「苦痛」も伴います。仕事や家事、学習と同じです。「楽しさ」や「勝ち」は線条体などで計算され、「苦痛」や「負け」は島皮質や偏桃体などで計算され、そのバランスで人は行動を選択します。またドーパミンの分泌は慣れ低下し「飽き」てきます。ですから、度が過ぎて、のめりこむ問題は、通常は一過性で流動的です。それがなぜ「飽きず」、出ない苦痛や金銭の負担を無視しているように見えてしまうのかが依存の問題だと思っています。
そしてその事情は個別的で、暮らしや仕事、学習に楽しさが見いだせない、不安が強い、抑うつが強い、衝動性が強い、生きづらい、など様々で、そうした状況への自己治療的行動として「ぱちんこ」がその役割を果たしている。だから、娯楽がその人にいかに役立っているか、どう役立っているのかをしっかり受け止め、その人や周囲にとってより楽しい人生をともに模索するのが第一義だと思います。
なので、「依存は病気」と思う必要は特にないし、一度なると戻らないなどということもない。もともと高い流動性があって、いい感じに対応できているときが必ずあるので、その期間を増やす方策を探る方が役に立つと思っています。
ただここでお断りしておきたいことは、ここでは「問題のある依存状態」はDSM-5のギャンブル障害診断基準を使った構造化面接で4項目以上が当てはまることを指します。我々は別の6項目4件法の尺度を作って、その程度がいかほどのものか調べています。結果、パチンコ・パチスロが気になって仕方ない、ストレスから逃れるために必要だ、がどちらかといえば当てはまり、使う金額増えた、やめると落ち着かなくなる、うそ、借金を頼む、はほとんどない、で当てはまってしまいます。なのでマスコミ等で一時期紹介されたような重度な事例をママ指すわけではありません。
そしてここも重要ですが、ギャンブリング障害の脳研究では、DSM-5のギャンブル障害診断基準に当てはまる人とそうでない人を比較している場合が多く、関連刺激でドーパミン神経系が活性化などと言うのもこの範囲の話に過ぎないことです。ですから、重度例、強迫例の説明に、ギャンブリング障害での脳研究データはあまり役立たない。脳が~、もう戻らない、などと考える必要はなく、そこは個別的だろうと考えるわけです。
依存になりやすい人・そうでない人
依存になりやすい人・なりにくい人は確実にいます。
行動遺伝学的な研究では、ギャンブリング障害の50%程度は遺伝要因で説明できます。
ギャンブル障害のリスク要因になる不安・抑うつの強さや衝動性の強さなどの神経症傾向も、30-50%は遺伝要因で説明できます。ギャンブリング障害とよく併存する、うつ、不安障害、薬物使用障害なども遺伝要因が強いですから、なりやすい人、なりにくい人は遺伝的にいます。
遺伝的といいのは言い換えれば脳を含むタンパク質の合成や脳のシステムの組み方のクセのようなものです。なので、その脳のクセを修正しようとかいうのは遺伝子に逆らうようなもので無駄な努力になりやすい。クセにあわせた生活の仕方、楽しみの見つけ方、落としどころを探るのがいいんだと思います。
危険な遊び方・安全な遊び方
誤解されやすいですが、「楽しくて」ハマる分には危険ではないと思っています。いい感じに飽きたり、年単位で見るとバランスのいい波ができていたりしますから。楽しいからよかった。遊んで満足。これが基本なら収入とのバランスが取れた遊技になります。
危険なのは「苦痛」や「負け」を「ぱちんこ」の原動力にすること。
たとえば、自分が打っていてやめた台で、他の人が出した時。続けて打っていればよかった、くやしい、などと思いがちです。テレビ番組でも演者がそんなことを言ったりします。しかし実際は、一試行ごとの抽選なので、天井や遊タイムを除くと、やめた台を続けていても同じ結果にはならない。「負けたから今度は勝つ」も同じ。昨日の負けと今後の勝敗は独立試行です。しかし、人の脳は独立試行を心の底から信じるようにはできていないので、「悔しい」「ちくしょう」「リベンジ」。
これを笑ってするようならいいですが、口惜しさが原動力になって、深追い、後追い、いつまでも満足しない。これが危険だと思います。もっというと、暮らし、仕事、娯楽、みなそこそこ満足。ここを目指さないのが危険かなと。がまんは大概ダメです。
安全な遊び方を具体的に
先ほどもお話ししましたが、楽しく遊ぶのが一番。楽しくなければやめるのがだいじだと思います。出なければ来ない。
西村先生とのAIを使った研究では、
「先月、パチンコ・パチスロに使ったお金について、家族もしくは友人に対して嘘やごまかしはなかった」
「先月パチンコ・パチスロに使ったお金は、失っても構わない範囲で済んだ」
「先月は、自分自身をコントロールして、パチンコ・パチスロを打っていたと思う」
「先月、パチンコ・パチスロを打つ前に、どこまでお金を使っても良いか、決めてから打ち始めた」
の4項目で依存リスクの75%ほどが説明できました。ですから、このチェックポイントを抑えておくのが、依存予防に役立つと思っています。
ほかには、大した寄与率ではないですが、投資額は月7万円の内々で。お店の使い方にもよりますが、ジャグラーと海を打つとリスクが低くなるようです。大した影響ではないですが。
遊技産業で働く人たちに知っておいて欲しいこと
先ほどの4項目をチェックする習慣を、ユーザーにも、従業員にも広めてほしいですね。
あとは、最近は全く耳にしませんが、業界関係者が「依存させてなんぼ」などと言うのは間違っているので、その認識は改めてほしいですね。
マスコミなどで一時取り上げられた事例は重症例で、ユーザーにはほとんどいない。自己申告プログラム、家族申告プログラムの利用数がそれを示しています。また、リスク範囲を広げた全国調査での依存疑いレベルの人もそう多くはなく、営業にはあまり寄与していません。
なので、「依存させてなんぼ」ではなく「楽しく遊んでいただいて、その対価に満足していただく」が経営者、スタッフの姿勢として正しいですね。そしてその実現はユーザーニーズの実現でいい。ユーザーニーズは低貸を生み出したり、導入機種は必ず稼働低下していったり、集合的には楽しく長く遊べる方向に落としどころを見出していきますから。
ユーザーにより楽しんでもらう、勝つ確率を上げてもらう、負ける確率を下げてもらう企業努力がだいじな依存対策だと思っています。
必要です。
「娯楽」は楽しいだけでなく、その行為や行動を思い描くだけで、ワクワクする、楽しくなる行為です。「やる気」を生みだす脳の線条体を活性化させるのが「娯楽」です。そして線条体が活性化すると、記憶効率がよくなったり、スキルを身につけやすくなったりする。
ですから、仕事や家事、学習も「娯楽」であるべきですが、これらは難行苦行だったりする。だから、暮らし、仕事とは別に、しっかり「娯楽」「楽しみ」の時間をつくることが、生活のハリを生み、やる気の維持はもちろん、健康にも役立ちます。
問題ある依存状態はなぜおきるのでしょうか?
「線条体」はドーパミンによって活性化します。精神刺激薬やアルコールでもドーパミンの分泌が増すので、「楽しさ」や「快感」が依存を引き起こすとよく説明されます。しかし、これはずいぶん雑な説明です。
「啓発週間でのギャンブル等依存症の脳的説明、ちょっと考え直した方がいいんじゃないか」 https://bblog.sso.biglobe.ne.jp/cms/article/edit/input?id=39421536
「ぱちんこ」での大当たりや勝ちは確かに楽しいですが、大当たりまでのハマりや負けといった「苦痛」も伴います。仕事や家事、学習と同じです。「楽しさ」や「勝ち」は線条体などで計算され、「苦痛」や「負け」は島皮質や偏桃体などで計算され、そのバランスで人は行動を選択します。またドーパミンの分泌は慣れ低下し「飽き」てきます。ですから、度が過ぎて、のめりこむ問題は、通常は一過性で流動的です。それがなぜ「飽きず」、出ない苦痛や金銭の負担を無視しているように見えてしまうのかが依存の問題だと思っています。
そしてその事情は個別的で、暮らしや仕事、学習に楽しさが見いだせない、不安が強い、抑うつが強い、衝動性が強い、生きづらい、など様々で、そうした状況への自己治療的行動として「ぱちんこ」がその役割を果たしている。だから、娯楽がその人にいかに役立っているか、どう役立っているのかをしっかり受け止め、その人や周囲にとってより楽しい人生をともに模索するのが第一義だと思います。
なので、「依存は病気」と思う必要は特にないし、一度なると戻らないなどということもない。もともと高い流動性があって、いい感じに対応できているときが必ずあるので、その期間を増やす方策を探る方が役に立つと思っています。
ただここでお断りしておきたいことは、ここでは「問題のある依存状態」はDSM-5のギャンブル障害診断基準を使った構造化面接で4項目以上が当てはまることを指します。我々は別の6項目4件法の尺度を作って、その程度がいかほどのものか調べています。結果、パチンコ・パチスロが気になって仕方ない、ストレスから逃れるために必要だ、がどちらかといえば当てはまり、使う金額増えた、やめると落ち着かなくなる、うそ、借金を頼む、はほとんどない、で当てはまってしまいます。なのでマスコミ等で一時期紹介されたような重度な事例をママ指すわけではありません。
そしてここも重要ですが、ギャンブリング障害の脳研究では、DSM-5のギャンブル障害診断基準に当てはまる人とそうでない人を比較している場合が多く、関連刺激でドーパミン神経系が活性化などと言うのもこの範囲の話に過ぎないことです。ですから、重度例、強迫例の説明に、ギャンブリング障害での脳研究データはあまり役立たない。脳が~、もう戻らない、などと考える必要はなく、そこは個別的だろうと考えるわけです。
依存になりやすい人・そうでない人
依存になりやすい人・なりにくい人は確実にいます。
行動遺伝学的な研究では、ギャンブリング障害の50%程度は遺伝要因で説明できます。
ギャンブル障害のリスク要因になる不安・抑うつの強さや衝動性の強さなどの神経症傾向も、30-50%は遺伝要因で説明できます。ギャンブリング障害とよく併存する、うつ、不安障害、薬物使用障害なども遺伝要因が強いですから、なりやすい人、なりにくい人は遺伝的にいます。
遺伝的といいのは言い換えれば脳を含むタンパク質の合成や脳のシステムの組み方のクセのようなものです。なので、その脳のクセを修正しようとかいうのは遺伝子に逆らうようなもので無駄な努力になりやすい。クセにあわせた生活の仕方、楽しみの見つけ方、落としどころを探るのがいいんだと思います。
危険な遊び方・安全な遊び方
誤解されやすいですが、「楽しくて」ハマる分には危険ではないと思っています。いい感じに飽きたり、年単位で見るとバランスのいい波ができていたりしますから。楽しいからよかった。遊んで満足。これが基本なら収入とのバランスが取れた遊技になります。
危険なのは「苦痛」や「負け」を「ぱちんこ」の原動力にすること。
たとえば、自分が打っていてやめた台で、他の人が出した時。続けて打っていればよかった、くやしい、などと思いがちです。テレビ番組でも演者がそんなことを言ったりします。しかし実際は、一試行ごとの抽選なので、天井や遊タイムを除くと、やめた台を続けていても同じ結果にはならない。「負けたから今度は勝つ」も同じ。昨日の負けと今後の勝敗は独立試行です。しかし、人の脳は独立試行を心の底から信じるようにはできていないので、「悔しい」「ちくしょう」「リベンジ」。
これを笑ってするようならいいですが、口惜しさが原動力になって、深追い、後追い、いつまでも満足しない。これが危険だと思います。もっというと、暮らし、仕事、娯楽、みなそこそこ満足。ここを目指さないのが危険かなと。がまんは大概ダメです。
安全な遊び方を具体的に
先ほどもお話ししましたが、楽しく遊ぶのが一番。楽しくなければやめるのがだいじだと思います。出なければ来ない。
西村先生とのAIを使った研究では、
「先月、パチンコ・パチスロに使ったお金について、家族もしくは友人に対して嘘やごまかしはなかった」
「先月パチンコ・パチスロに使ったお金は、失っても構わない範囲で済んだ」
「先月は、自分自身をコントロールして、パチンコ・パチスロを打っていたと思う」
「先月、パチンコ・パチスロを打つ前に、どこまでお金を使っても良いか、決めてから打ち始めた」
の4項目で依存リスクの75%ほどが説明できました。ですから、このチェックポイントを抑えておくのが、依存予防に役立つと思っています。
ほかには、大した寄与率ではないですが、投資額は月7万円の内々で。お店の使い方にもよりますが、ジャグラーと海を打つとリスクが低くなるようです。大した影響ではないですが。
遊技産業で働く人たちに知っておいて欲しいこと
先ほどの4項目をチェックする習慣を、ユーザーにも、従業員にも広めてほしいですね。
あとは、最近は全く耳にしませんが、業界関係者が「依存させてなんぼ」などと言うのは間違っているので、その認識は改めてほしいですね。
マスコミなどで一時取り上げられた事例は重症例で、ユーザーにはほとんどいない。自己申告プログラム、家族申告プログラムの利用数がそれを示しています。また、リスク範囲を広げた全国調査での依存疑いレベルの人もそう多くはなく、営業にはあまり寄与していません。
なので、「依存させてなんぼ」ではなく「楽しく遊んでいただいて、その対価に満足していただく」が経営者、スタッフの姿勢として正しいですね。そしてその実現はユーザーニーズの実現でいい。ユーザーニーズは低貸を生み出したり、導入機種は必ず稼働低下していったり、集合的には楽しく長く遊べる方向に落としどころを見出していきますから。
ユーザーにより楽しんでもらう、勝つ確率を上げてもらう、負ける確率を下げてもらう企業努力がだいじな依存対策だと思っています。
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