10年にわたるいわゆるパチンコ・パチスロ依存研究でわかったこと

パチンコ・パチスロ遊技障害(パチンコ・パチスロでのギャンブル等依存)研究
パチンコ関連の研究はShinohara K et al (1999) Physiological changes in Pachinko players; beta-endorphin, catecholamines, immune system substances and heart rate, Appl Human Sci. 1999 Mar;18(2):37-42からだが、2013年ころから依存関連の研究を社安研で始めた。今考えると当時の常識にずいぶん侵されていたなあとは思う。アルコール使用障害の延長でいいような。えらく違うことはわかった。

社安研、パチンコ・パチスロ遊技障害研究会での研究 https://www.syaanken.or.jp/?p=11674 論文多数
★パチンコ・パチスロ用のギャンブル等依存うたがい尺度(PPDS)を作り全国調査を行ったところ、2017年1-2月時点で、過去1年間の遊技障害うたがい率は0.4%、約40万人と推定された。
★この数字は他の国内調査や諸外国の調査とそれほど違わないもので、「日本はギャンブル依存症が突出して多い」「それはパチンコ・パチスロの普及ゆえ」というのが誤りであることが分かった。

★ここでの遊技障害うたがいはDSM-5の診断基準(症候9項目中4項目以上&機能障害苦痛)に基づいてはいるが、この基準の内、「臨床的に意味ある機能的障害や苦痛」の存在はほぼ無視されている。
★法でいう「ギャンブル等依存症」はICD-11のギャンブリング障害におおむね該当するが、ICD-11はコントロール障害、ギャンブリングの最優先、否定的な結果が生じているにもかかわらず継続または拡大、の「すべて」と、機能的障害と苦痛の存在が診断要件であり、DSM-5よりも限定的。https://kikusennin.seesaa.net/article/202202article_4.html
★ICD-11基準ならこれまでの「有障害うたがい」は「要検査うたがい」程度に格下げすべき。「有障害率」「有病率」という使い方はもってのほか。
★マスコミ等で紹介される重度事例は、尺度を使って推定される「依存うたがい」の限定的な一部。
★パチンコ・パチスロ遊技障害うたがいは自然寛解が多く、進行性で不可逆的とは言い難い。

★債務整理体験がない場合は、「いつも自由時間だけ遊ぶ」で相当に予防可能。
★債務整理体験がある場合には、「上限を決め、上限に達したら遊技を控える」の励行でリスク低減が可能。
篠原ら「パチンコ・パチスロ全国調査データを用いた遊技場でのギャンブリング障害予防対策の検討 」アディクションと家族 35(2) 135-143 2020年6月
★自己申告、家族申告プログラムはだいじ。もっと拡張的に使う方法を模索したほうがいい。

★神経症傾向(敵意、不安、抑うつ、自意識、衝動性、傷つきやすさ)が遊技障害の長期的で強力な促進要因。
★「パチンコ・パチスロを自分で止めることができない」という認知の歪みが遊技障害の発生や進行に強い影響。⇒コントロールできるという広報、方法の提示。

★パチンコ・パチスロ遊技障害うたがいは習慣優位型と逃避優位型に区分できる
★習慣優位型(軽度障害レベル:外向性/開放性/調和性/誠実性)にはみずからの性格特性を生かした代替となる習慣行動の提示。
★逃避優位型(中等度~重度障害レベル:神経症傾向)には不安・抑うつ等の神経症傾向に対する個別の対処。
★ADHD、自閉スペクトラム、境界知能等の併存障害傾向、あるいは多重債務等の生活上の問題があればその対処を優先する。
参考:発達障害の視点から見たギャンブル等の依存(ワンデーポートと自閉症協会:マンガになっていて読みやすいです)
http://www.autism-japan.org/izon/GambleBooklet.pdf
これも必読:ギャンブル等依存対策では中村氏のこの意見を無視してはいけないのではないか
https://kikusennin.seesaa.net/article/202203article_3.html?1646289222

★行動遺伝学(双生児研究)でのギャンブリング障害(ただしDSM系尺度)遺伝率50%は重視すべき。性格程度には個体側の要因が想定できる。

日遊協、パチンコ・パチスロ遊技障害防止研究会での研究
★出玉性能は遊技障害うたがいの原因とはいえなかった 堀内ら「パチンコの出玉性能とパチンコ・パチスロ遊技障害の因果関係」(IR*ゲーミング学会 in print)
★広告宣伝は遊技障害うたがいの原因とはいえなかった
★健全遊技の推奨が重要

公立諏訪東京理科大でのビッグデータ研究 西村ら「会員カード常時使用者におけるパチンコ・パチスロ遊技障害、健全遊技、遊技量の関係」(アディクションと家族 第37巻第1号76-84)
★会員カードに紐づいた遊技頻度、時間、負け額などは、遊技障害リスクと有意な関連がないか、あってもその効果量が極めて小さい。
★高射幸性機の遊技時間は遊技障害と有意な関連はあるが、効果量はきわめて小さく、因果的な関連があるとはいえなかった。
★健全遊技が遊技障害リスクを最もよく説明した。健全遊技の推奨こそが予防のキモ。
「先月パチンコ・パチスロに使ったお金は、失っても構わない範囲で済んだ」
「先月において、他に優先すべき事象がある時は、パチンコ・パチスロを打たなかった」
「先月、パチンコ・パチスロを打つ前に、どこまでお金を使っても良いか決めてから、打ち始めた」
「先月、パチンコ・パチスロに使ったお金について、家族もしくは友人に対して嘘やごまかしはなかった」
これらのチェックを自己申告プログラムの延長として会員などに行うのが有効。

★従業員のアンケート型調査では、遊技頻度、遊技時間、負け額が遊技障害リスクと有意な関連を示し、効果量も中程度であった。
★従業員には主観的な頻度、時間制限が有効

その他
運動は発達問題を介してギャンブリング障害に役立つ
https://kikusennin.seesaa.net/article/202201article_1.html
ドーパミン危ない説って本当?
https://kikusennin.seesaa.net/article/202112article_2.html
遊技の開始や継続に役立つ要因と、遊技障害の発生や進行に抱わる要因は別になりうる
https://www.syaanken.or.jp/?p=11674
尺度問題
https://kikusennin.seesaa.net/article/202111article_2.html
不安、うつ
https://kikusennin.seesaa.net/article/202109article_9.html
「ギャンブル等依存」における「自己責任」をめぐって
https://kikusennin.seesaa.net/article/202109article_8.html
機能障害と苦痛
https://kikusennin.seesaa.net/article/202109article_4.html

詳細はnote 10年のいわゆる依存研究でわかったこと~「パチンコ・パチスロでのギャンブル等依存」から「ぱちんこの危ない遊び方」研究へ~
https://note.com/s96hige/n/nacff31aa290f

以上

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