スクリーンタイムは短い方がいい、とはいえなそう
「デジタルは悪、極力触れない方がいい」は間違いらしい
スマホ、ゲーム、SNSといったデジタルメディアの子どもへの影響は、ゲーム障害やスマホ依存など、この国では負の影響を扱う報道が多く、できるだけ触れないようにするべきであるかのように語られがちです。ですから、保護者の方々が、子どもたちにデジタルコンテンツを使わせることに不安を持たれるのも無理からぬ話です。しかし、デジタルメディアの頭の働き(認知機能)に与える影響についての研究結果は、マイナスに働くとするものもあれば、プラスに働くとするものもあり、混とんとしているのが実態です。
この点について、Bruno Sauceとカロリンスカ研究所のTorkel Klingbergらは、デジタルメディアが認知機能に与える影響についての研究結果がばらついているのは、認知機能に強く影響を与える遺伝的要因や、世帯収入、親の学歴、親の職種などの社会経済的地位(SES)を考慮に入れていない研究が多いことによるのではないかと考えました。また、因果関係の同定に必要な個人を一定期間追う縦断的研究が乏しいことによるのではないかと考えました。実はいま、医療や教育、心理に関連する研究ではこうした問題点が指摘され、多くの研究で見直しが進んでいます。
そこで、Bruno Sauceらは、ABCDデータセットという多くの被験者に様々な測定を繰り返したデータを使って、米国の9855人の子どもを対象に、ベースライン(9~10歳)および2年後の認知機能を測定しました。そして、認知機能にかかわると考えられる遺伝的差異のデータと社会経済的地位(SES)の影響を統計学的にコントロールしながら、「デジタルメディアを受動的に視聴する時間(受動的視聴時間)」「SNSなどで社会的につながっている時間(SNS時間)」「ゲームをしている時間(ゲーム時間)」それぞれが子どもの認知機能に及ぼす影響を推定しました(2022)。
結果、ゲームを行っている時間が長い方が頭の働き(認知機能)が向上しており、SNSを行っている時間や、ゲームやSNS以外の受動的にデジタルメディアに接している時間は認知機能に影響しないことが示されました。
では、なぜデジタルメディアに接している時間が長いと、子どもの脳の働きに悪影響が生じるという研究が少なからず報告されてきたのでしょうか。Bruno Sauceらは、それは認知機能に与える遺伝要因や社会経済要因が、スクリーンタイム(受動的視聴時間+SNS時間+ゲーム時間)に影響するから、見た目ではスクリーンタイムが長いと認知機能が低くなるように見えてしまうのです。実際、彼らの研究でも、ベースラインでは受動的視聴時間とSNS時間は、その時間が長いことと認知機能が低いことが関係していました。しかし、二年後のデータを勘案すると、ゲームを行っている時間が長い方が認知機能が向上しており、SNSを行っている時間や、ゲームやSNS以外の受動的にデジタルメディアに接している時間は認知機能に影響しておらず、スクリーンタイムに認知機能への悪影響はなく、むしろ好影響を与えうるというのが結論となるのです。
ゲーム時間に関してはWHOのICD-11(有病率、致死率の統計のための国際疾病分類第11版)に「ゲーム障害(いわゆるゲーム依存)」が記載されたことで注目されました。しかしICD-11基準にのっとったと称する久里浜医療センター、富山大、長崎大の調査はいずれも2022年2月に診断要件が示されたICD-11基準とは異なっています。その大半はゲーム障害ではなく「危ない遊び方(Hazardous gaming)」なので、「自由に遊んでいいときに遊ぼう」「他に優先すべきことがある時はそちらを優先しよう」「いつまで遊んでいいか決めてから遊ぼう」「家族や友人に対して嘘やごまかしなく遊ぼう」といった健康的な遊び方をしていれば、断ゲームや時間制限は不要でしょう。SNS、ユーチューブなどの受動的視聴も同様です。
スマホ、ゲーム、SNSといったデジタルメディアの子どもへの影響は、ゲーム障害やスマホ依存など、この国では負の影響を扱う報道が多く、できるだけ触れないようにするべきであるかのように語られがちです。ですから、保護者の方々が、子どもたちにデジタルコンテンツを使わせることに不安を持たれるのも無理からぬ話です。しかし、デジタルメディアの頭の働き(認知機能)に与える影響についての研究結果は、マイナスに働くとするものもあれば、プラスに働くとするものもあり、混とんとしているのが実態です。
この点について、Bruno Sauceとカロリンスカ研究所のTorkel Klingbergらは、デジタルメディアが認知機能に与える影響についての研究結果がばらついているのは、認知機能に強く影響を与える遺伝的要因や、世帯収入、親の学歴、親の職種などの社会経済的地位(SES)を考慮に入れていない研究が多いことによるのではないかと考えました。また、因果関係の同定に必要な個人を一定期間追う縦断的研究が乏しいことによるのではないかと考えました。実はいま、医療や教育、心理に関連する研究ではこうした問題点が指摘され、多くの研究で見直しが進んでいます。
そこで、Bruno Sauceらは、ABCDデータセットという多くの被験者に様々な測定を繰り返したデータを使って、米国の9855人の子どもを対象に、ベースライン(9~10歳)および2年後の認知機能を測定しました。そして、認知機能にかかわると考えられる遺伝的差異のデータと社会経済的地位(SES)の影響を統計学的にコントロールしながら、「デジタルメディアを受動的に視聴する時間(受動的視聴時間)」「SNSなどで社会的につながっている時間(SNS時間)」「ゲームをしている時間(ゲーム時間)」それぞれが子どもの認知機能に及ぼす影響を推定しました(2022)。
結果、ゲームを行っている時間が長い方が頭の働き(認知機能)が向上しており、SNSを行っている時間や、ゲームやSNS以外の受動的にデジタルメディアに接している時間は認知機能に影響しないことが示されました。
では、なぜデジタルメディアに接している時間が長いと、子どもの脳の働きに悪影響が生じるという研究が少なからず報告されてきたのでしょうか。Bruno Sauceらは、それは認知機能に与える遺伝要因や社会経済要因が、スクリーンタイム(受動的視聴時間+SNS時間+ゲーム時間)に影響するから、見た目ではスクリーンタイムが長いと認知機能が低くなるように見えてしまうのです。実際、彼らの研究でも、ベースラインでは受動的視聴時間とSNS時間は、その時間が長いことと認知機能が低いことが関係していました。しかし、二年後のデータを勘案すると、ゲームを行っている時間が長い方が認知機能が向上しており、SNSを行っている時間や、ゲームやSNS以外の受動的にデジタルメディアに接している時間は認知機能に影響しておらず、スクリーンタイムに認知機能への悪影響はなく、むしろ好影響を与えうるというのが結論となるのです。
ゲーム時間に関してはWHOのICD-11(有病率、致死率の統計のための国際疾病分類第11版)に「ゲーム障害(いわゆるゲーム依存)」が記載されたことで注目されました。しかしICD-11基準にのっとったと称する久里浜医療センター、富山大、長崎大の調査はいずれも2022年2月に診断要件が示されたICD-11基準とは異なっています。その大半はゲーム障害ではなく「危ない遊び方(Hazardous gaming)」なので、「自由に遊んでいいときに遊ぼう」「他に優先すべきことがある時はそちらを優先しよう」「いつまで遊んでいいか決めてから遊ぼう」「家族や友人に対して嘘やごまかしなく遊ぼう」といった健康的な遊び方をしていれば、断ゲームや時間制限は不要でしょう。SNS、ユーチューブなどの受動的視聴も同様です。
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