元祖ギャンブル行動症支援団体ワンデーポートの中村さんと、ぱちんこタレントの大御所、大崎一万発くんとの対談。面白いです。
ワンデーポート通信270号 大崎一万発さんへのインタビュー
2023.01.25 Wednesday10:30
http://onedaypt.jugem.jp/?eid=3943&fbclid=IwAR2ch_Sp_CN7fQ1MVJI0dFAPMJbTj6M93qehhQZem89vLc8FzCzRH-n9aEA
より、許可を得て転載。
ワンデーポートはギャンブル行動症支援のさきがけ。初期は今の自助グループや支援団体がしているように、底つき体験をへて、あるいは気づきを促し、断~を誓い、ハイヤーパワーにすがり、12のステップを踏んでいくミーティングを主軸とする支援を行っていたが、発達問題などが背景にある場合ミーティングがあわないケースが多々あり、むしろ日常に楽しみを見つけ(それがギャンブリングでもいい)、暮らし、生活、余暇を立て直していくこと、その支援をすることに主軸を移した。個人の行動変容を直接促すのではなく、環境調整し生きやすい道をともに探る。
大崎氏は以下にプロフィール。まあまあ、やばくていい人。ほぼ破綻しそうになっては自力回復、新たな道を見つけていく。
パチンコとの健全なつきあい方 大崎一万発さんへのインタビュー
大崎一万発さん プロフィール
1968年高知県生まれ。早稲田大学社会科学部卒後、(株)白夜書房入社。『パチンコ必勝ガイド』編集長を経て、2003年よりフリー。現在は編集者、ライター、パチンコタレントとして多数のファン向けメディアに関わるほか、パチンコ関連のアドバイザー、ホール営業プランナーとしても活躍中。テレビ、ラジオ、連載多数。
YouTubeの『まんぱつ』は登録数7万を超える人気チャンネル。パチンコ業界歴30年を超えるキャリアからの視点で捉え、「依存」のテーマに対しても鋭い切り込みで訴える動画も公開されている。
趣味はランニング。
中村:お久しぶりです。10年以上前に東京都遊技業協同組合のイベントでお会いして以来かと思います。今日は、大崎さんがいまのパチンコをどのように見ているか、依存問題についてどのように考えているか、それとランニングについてのお話をおうかがいしたいと思っています。2年前からYouTubeもやられていますが、12月15日公開された動画※1ではオカルト※2で考えたりする「負けるパチンコは楽しい」とおっしゃっていました。これは依存対策に通じると思いましたが、まずは「負けるパチンコが楽しい」という意味についてはお話してもらえますか?
「負けるパチンコは楽しい」という意味
大崎:僕はもともと『パチンコ必勝ガイド』※3という攻略誌をつくっていた人間なので、パチンコは再現性のある勝ち方の方法論が確立していることを知っています。その方法を身に付けると、パチンコは趣味と実益を両立できる有益なギャンブルになります。ただ、それで稼ごうとするなら、楽しいとか面白い感覚を捨てて、仕事として打つ必要があります。意外に思われるかもしれませんが、パチプロは誰1人面白いと思ってパチンコをやっていないです。彼らにとってパチンコは仕事、会社員の方が「会社に行くのが嫌だなぁ」と同じように、「パチンコ行くのが嫌だなぁ」と思いながら、でも勝たないと給料がもらえないから打ちに行きます。依存とは逆のベクトルだと思います。パチプロの立場から考えると、勝ち方をしっかり身に付けてもらうことで、依存から脱却しましょうというロジックもあるとは思いますが、その勝ち方を身に付ける域に達することができる人は、100人に1人もいないと思います。テクニカルな部分と知識を身につけないとそこまでは行くことができません。僕は、パチプロもやっていたので、勝ち方もわかってはいますが、テクニカルに打つことが、だんだん馬鹿馬鹿しくなってきました。なんで遊びごときで苦労しなくてはいけないのだろうと考えるようになりました。自分が打っている台は、千円で〇〇回転※4だから、理論上は5時間打ったら5千円負けるとわかっていても打つようになりました。勝つことばかり考えるのではなく、開き直って、運や「引き」に身を任せて遊ぶ。でも、自分の打ち方では長期視点で見たら負けることをわかっているから、無理せずほどほどのところで引いておこうと思うようにもなります。2万円使って1万5千円戻ってきたときに、あと5千円追いかけて取り戻そうと考えるのではなく、「5千円負けまで戻したのだから、ここでやめておこう、半日遊んだのだから5千円は置いていこう」と、負けを受け入れることで楽に打てるようになって、のめり込みとは違う感覚でパチンコとの付き合い方ができるようになりました。パチンコはたまたま大きく勝つこともあるし、めちゃくちゃ負けることもあります。でも、ならすと(長期で見ると)、小博打です。大して勝てないです。そんな遊びにのめり込んで、熱狂して身を持ち崩すのは馬鹿げていると思います。ほどよい距離感でちょっと遊んで、残った時間を家族のことだったり、自分の別の趣味だったほうが有意義ではないですか。こういう老成した考え方というのは、パチンコ打ちには理解してもらえません。目先のお金からパチンコをする人が多いので、趣味や遊びとして、ちょっと負けるくらいがいいんだよという感覚にはなかなか行きつかないです。ただ、それをわきまえた上で遊んでくれる大人のプレイヤーさんを育てていくことを考えていかないと、プレイヤーとパチンコ業界のウィンウィンな関係は作れないと思います。
中村:ワンデーポートを利用する人は、すでに借金をしていて、「取り戻すためにパチンコをしていた」という人が多いです。その人たちに、勝つパチンコを教えればよいという考え方もありますが、ギャンブリング障害に該当する人の多くは生活障害や社会適応の問題を抱えています。ですから、勝つことで借金が返済できても、生活や人生が安定したり、満足度が上がらなければ解決にはなりません。むしろ、大崎さんがおっしゃる「負けても面白ければよい」と考えたり、勝てないものにのめり込むことの無駄に気付いて距離を置くことが効果的かつ現実的な向きあい方だと思います。
パチンコは大して勝てません
大崎:パチンコはギャンブルと言い切るのは問題があると思っていて、娯楽の一種です。「遊びですよ」という考え方をベースに置いておくと、娯楽なら使ったお金が戻ってくることはないということになりますよね。パチンコはマクロな視点で見ると1時間千円とか千5百円程度の遊びです。半日遊んで1万円負けるにすぎないわけです。逆に言うと、良い台に座っても半日で1万円程度です。勝てるのはその程度というところに行きつけば解脱できると思います。僕も若い頃は、お小遣いを増やしたいとか、10箱出している人を見て、自分もああなりたいと考えたりしました。パチンコは、そういうそそり方をしてお客さんを集めているわけです。『パチンコ滅亡論』(大崎一万発×ヒロシ・ヤング)の中で「パチンコは大して勝てません」と書きましたが、リアルな話です。これを皆さんにお伝えできれば、のめり込む人はいなくなると思います。パチンコ業界が言ってしまうとお客が来なくなるので、業界の皆さんは口にしませんが、その端境で、苦しまれる人がいるということだと思います。キャンプにお金を使うのと同じように考えてほしいと思います。
中村:ご家族や支援者の皆さんは、1時間に千円とか千五百円の遊びであるとか、娯楽だという考え方は理解していないと思います。
大崎:とんでもない(悪い)遊びだと思っていますか(笑)。
中村:1回行けば必ず2~3万円は負けると思っています。仕事が休みの日だけパチンコに行って、年に300万円負けたという話を信じている家族もいました。本人が負けを誇張することもありますし、他のことにお金を使っているのにすべてパチンコのせいにしている人もいると思います。
大崎:マスコミやパチンコ嫌いな人は極端なことを吹聴したがります。たしかに、極端なところだけ摘まんだら、月に100万円負ける人も勝つ人もいます。0.0何パーセントという極端なところではそういう人もいますが、でもならしたら1時間千数百円です。キャンプに行く人がキャンプ用品を買って、車のガソリン代を使うようなことと同じ遊びです。お金を使ったなりの余暇時間を過ごせるのは、パチンコもキャンプも同じです。
中村:ごくたまに大きく勝つので、パチンコには危険な面もありますが、公営競技やカジノと比べたら、リスクは少ないわけですね。ワンデーポートの利用者の皆さんに、パチンコで勝ったり負けたりして平均1時間にいくら使うと思うかと聞くと、「1時間1万円くらい」と答える人が多いです。問題を抱える人もパチンコの知識を持っているようで持っていません。ところで、最近のパチンコはどんな台が流行っているのですか? パチンコをやったことがない人が、千円、二千円を持っていって遊べる台はありますか?
大崎:パチンコ業界も(出玉が)偏るスペック※5を作ったほうが、極端に出る台はお客さんが熱狂します。いまの台は極端になっていて、ならせば1時間に千数百円の機械でも、1時間に10万円出る機械があります。一方で、ご年配の方やゆっくり遊びたい方の向けに、それほど負けない台もたくさんあります。古き良き時代のパチンコのような出玉の波になります。1円パチンコ、0.5円パチンコ、0.2円※6パチンコまであります。レートは違っても大当たりのプロセスはまったく同じですから、お金をかけないで遊ぶこともできるわけです。こういう、娯楽としてのパチンコの姿を、偏見がある人や、パチンコアンチに体験いただけるといいなと思います。周りの人にパチンコの正しい知識を知ってもらい、「こういう遊び方をしたほうが良いよね」という形をつくらないといけないと思います。「ヤバい、マズい、パチンコに行くな」と蓋をしてしまうのは、パチンコをやる人にも、業界にも不幸なことだと思います。
国の対策と中村さんたちの対策の違いを理解していなかった
中村:新聞やテレビで取り上げる「体験談」は、パチンコが悪だと認識している人の話を取り上げる傾向がありますが、問題を抱えている人は痛い思いをしてもパチンコが好きです。人の趣味趣向はそんなに簡単に変えられるとは思えません。パチンコが悪だとか、とんでもないギャンブルだという認識が社会にあると、問題を抱えている人は自己否定しなければならないですし、家族や支援者に対して正直に話ができなくなると思います。パチンコの偏った情報や間違った知識が社会に広がることは、依存問題にプラスに働くことはないと思います。
大崎:パチンコにのめり込んだけれど、自然に戻ってくることができる人もいます。でも、そこに戻ることができない人もいます。それが気質的な問題なのか、知識不足なのか、周囲のサポート不足なのかいろいろなのだと思いますが、「ああ、パチンコに熱くなるなんてしょうもない」と戻ってくることができないのは何故なのか分析する必要があると思います。それぞれ、原因は違うわけですから。
中村:「自然に戻ってくることができる」という認識は、パチンコをやり続けている方には見えることなのだと思いますが、自助グループや医療機関に行く人は自然に戻っている人(自己解決している人)ではないので、自己解決を否定します。国の対策の指針であるギャンブル等依存症対策推進基本計画では、自己解決している人がいることを想定していません。「ギャンブル等依存症になったら脳が変わるとか、病気なので相談に行きましょう」と啓発しています。恐ろしいくらいに根拠もなく、恐ろしいくらい実態とズレています。
大崎:篠原菊紀先生と対談したときも、元々気質的問題がある方が多くて、その人たちが、たまたまパチンコに出会って問題になってしまうと伺いました。だから、パチンコが悪であるという考えは根本的に間違っているわけですよね。できるかどうかは別として、パチンコをやる前にスクリーニングして、パチンコをやらせないような仕組みをつくる必要があるのではないでしょうか。
中村:ケースバイケースだと思います。当然、パチンコをやめる支援も必要ですが、ワンデーポートの活動を続ける中で、金銭管理などをして低貸のパチンコで遊んでも問題にならないようにする支援も必要だということに気付きました。パチンコだけが楽しみしかない人に、新たな娯楽を示さずに居場所を奪うようなことは問題を悪化させるリスクもあります。ワンデーポートでは、入所中は禁止していますが、アパートに自立して長期的に金銭管理をしている人の中には、パチンコ代としてお金を渡している人もいます。やめるか続けるかは、最終的には本人が決めることだと思います。絶対に禁止にしてしまうと、隠れてパチンコをすることになるので、信頼関係は築くことができないです。リカバリーサポート・ネットワークでの電話相談でも、適度にパチンコと付き合うような相談をしていると思います。一方、国や自助グループの考え方は、ギャンブルをやることは病気の再発になってしまいます。
大崎:パチンコは不遇な環境やストレスを抱える人にとって一種の安らぎや居場所になっていることはパチンコの存在意義だと思いますが、国としては、悪いものとして一括りにしたいのですかね。
中村:ギャンブル等依存症対策推進基本計画は物質依存と同じくくりで考えています。アルコール依存症や薬物依存症の考え方では、適度に遊ぶという支援には行きつかないと思います。最近、危惧していることは、パチンコ業界の人たちに(病気ととらえる)国の方針に盲目的に従う人が増えていると感じることです。基本計画では、パチンコは危険で悪い遊びとは言っていませんが、支援や治療の内容を考えると、パチンコは悪というとらえ方に行きついてしまう可能性もあります。
大崎:国の対策と中村さんたちの対策の違いを僕自身が理解していないところがあったと思います。ひとくくりに考えていました。篠原先生が国の対策に問題があるという話についてピンと来ていないところがあったのですが、中村さんの話を聞いてよくわかりました。
中村:健全遊技とのめり込みの予防、自己解決と支援はつながっていると思います。本来、パチンコ業界の依存対策は、健全遊技を促すことも含まれると思います。パチンコ業界は前向きに取り組める要素もあるはずです。
大崎:パチンコ業界の人たちは、(のめり込んで)一部に救われない人が出てくるけど、その人のことに踏み込みたくないのが本音だと思います。この問題に取り組むことは、得がなく損なことだと。僕もいまの立場がなく、ただパチンコユーザー視線では、ハマる人の責任だという感覚はゼロではないです。でも、業界がそう言い捨ててしまうのは問題だと思います。
中村:パチンコ業界で依存の問題に対してはじめに声を上げたセントラルカンパニーの力武一郎さんや、ワンデーポートに支援してくれている東京都遊技業協同組合の皆様は俯瞰して見ていて、健全遊技とつながるという認識があると思いますが、いまの国の対策から入ると形だけの対策になってしまうような気がします。
大崎:商売に影響が出なければよいとなってしまうと、行政へのポーズでしかなくなりますね。真剣に依存問題に取り組むということではなくなりますね。
ランニング
中村:11月27日に私たちも参加した小江戸川越ハーフマラソンに大崎さんも参加されていましたが、いつから走っているのですか?
大崎:5年くらい前、50歳手前で走りはじめました。太ってはいなかったですが、健康診断で、脂肪肝と、血中のコレステロール値も高いと言われたことがきっかけです。考えてみれば何も運動をしていなくて、年齢的にもセルフケアをしないといけないと思ってはいたんですが、性格的に機具を買ったりジムに行っても続かないのはわかっていたので、いちばん手軽にできるランニングにしたんです。それまでランニングはもっとも嫌いな運動でしたけど、しんどかったら歩けばいいやと。完全に素人だったので、最初は1kmも走ることができませんでしたが、走っているうちに気持ちが良くなって、だんだん面白くなりました。興味が湧いて、シューズを買ってみようとか、カッコいいウェアを買ってみようかなとなっていくと、趣味の域に入り走ることが生活の一部になりました。走ることがトレーニングではなく、「好きだから」「気持ちが良いから」というところに到達できたから続いているんだと思います。出張のときもシューズとウェアを持っていきます。はじめて行く場所で走ると土地勘も養えるし、距離感も掴めます。どこに行ってもランニングしている人を見かけますし、シンパシ―のようなものを感じます。僕は奥さんにも走ろうと言うのですけれど、しんどいというところから出ることができないので、嫌だと言ってすぐやめてしまいます。早歩きくらいでもいいので、やっているうちに到達するものだと思うのですが……。ランニング依存という言葉もある通り、行き過ぎてしまうとガタが来ます。僕も月に300km走ろうということもありましたが、自分の適性の距離数やペースをつかんでくると娯楽の一つとしてのランニングになります。フルマラソンを何時間で走ろうとか記録をつくろうとかいう本がありますが、自分は無理をすると続かないので、ダラダラ走っているだけです。だから何年も走ることができていると思います。生涯の娯楽になって人生の楽しみが一つ増えたと思っています。パチンコもそういう位置づけになってくれたら良いと思います。ランニングは苦しいものという誤解や偏見がありましたが、自分の習慣になったときに、パチンコを生活の一部として楽しんでいる高齢者の方の気持ちが共感できたように思いました。
中村:私は無理をしすぎてしばらく走っていない時期があったので、大崎さんの話は、教訓という意味を含めてよくわかります。私も走ることで気付くことはたくさんあります。ランニングを趣味にしている人には、大酒飲みが多いのですが、アルコール依存症で亡くなったとか入院したという人を見たことがありません。それどころか、とても幸せな生活をしているように見えます。依存症の回復や治療という以前に、走って健康であることがとても大事なことだと感じます。アルコール依存症は医療の問題だとされていますが、実は人生や健康の問題としてとらえるべきではないかと思っています。もちろん、ギャンブルも。
大崎:僕も走った後にレモンサワーを飲むのが楽しみです。モチベーションは不健康なのかもしれませんが、走ったことで、頭のモヤモヤしたものが吹っ飛び、達成感を得られます。もし、走っていなければ、熟年鬱のようなことになっていたかもしれないと思うことがあります。ただし、若干のストイックさは必要になってくるので、パチンコ打ちとの相性はよくないとは思います。パチンコ大好きで、ランニングをやっている人は希少です。両立している人はたまにいますが、そういう人のパチンコ感は老成しています。趣味の一つとして、勝ち負けではないパチンコを楽しんでいます。
パチンコ店をランニングベースの場にできないか
中村:パチンコホールにシャワーとか着替えを入れるロッカーを置くことはできないですか。
大崎:ランニングベース的な役割な場所ですね。それ良いですよ。全国津々浦々にパチンコ店はあるわけですし、いまパチンコホールは防災設備の拠点としての機能を備える取り組みが進んでいます。食料や飲料水の備蓄をしているホールさんが増えています。災害時に駐車場を開放して避難できるような取り組みも広がっています。ランニングのベースというのは、その発展形だと思います。娯楽の発展形として余力を持って運営してもらうと、パチンコの意義が上がってくると思います。会員カードを作ったら、使えますよという形でもよいかもしれません。パチンコホールではご年配の方向けに、健康診断のサービスを行っているところもあります。血圧を測ってくれたり、保健師さんが相談に乗ってくれたりすることもあります。その延長のような形で、「運動はどうでしょう」みたいなことができると面白いと思います。スポーツ用品メーカーを巻き込めるかもしれません。パチンコ景品は1万円まで※7まで置くことができるので、シューズを置いてもよいかもしれません。パチンコホールのオーナーはスポーツをやる人が多いので、お客さんに対しても普及していきましょうよという考え方は不自然ではないと思います。
中村:ホール内に篠原先生が健康について解説したパンフレットを置いてもらうとか、ウォーキングやランニング教室を開けば、健全遊技推進に寄与するのではないでしょうか。
大崎:そういう提案をしていきましょうよ。
パチンコの存在意義
中村:大崎さんがホールでパチンコを打たれていて、必要な居場所になっていると思うエピソードがあれば聞かせてもらえますか。
大崎:店員さんと話をすることで、鬱々とした気持ちを晴らして前向きに生きていくことができるようになったという話をよく聞きます。末期のガンでパチンコが好きなお父さんがいて、その子どもはパチンコをやらないで偏見を持っていたのだけれど、お父さんがどうしても行きたいというので、パチンコに連れて行ったそうです。そしたら、お父さんと店員さんの関係が見えて、ほんとうに良い場所で遊んでいたということがわかり、パチンコのイメージが変わったそうです。
中村:娯楽が少ない地方都市では、パチンコホールが高齢者の人たちの娯楽や居場所となっているということはあるのでしょうか。
大崎:地方のホールでは、1円パチンコ、0.5円パチンコには、おじいちゃん、おばあちゃんがたくさん来ています。お店としては、商売的には1円パチンコはうま味がありません。でも、毎日来て店員さんと話をする居場所を残さなくてはいけないという使命感が現場にはあります。
中村:ボウリング場がそういう役割を果たしているとは思いますが、いまボウリング場もどんどん閉店しています。高齢者の方の娯楽や居場所の問題はこれからの社会的な課題になるような気がします。
大崎:これからはパチンコ屋さんしかなくなってしまうかもしれません。
中村:高齢者の集まる場所が施設や病院だけになってしまうのは悲しいと思います。
大崎:病院の待合所的な空気感があるパチンコホールもあります。お互いの生存確認をしたりできます。10日間みないと「あの人どうしたのだろう」となって、家を訪ねてみたりすることもあるそうです。パチンコホールは、高齢化社会の中で娯楽として毎日の刺激になるような価値観に落とし込んでいくように持っていかないと産業としても成り立っていかないと思います。地域の社交場的な存在であるパチンコホールは減ってきています。そうなったら、お年寄りの方の行く場所がなくなります。認知症が進んでしまう人もいるかもしれません。そうなると医療費の増大につながって行きます。娯楽、リハビリの場としてのパチンコホールをいかに残していくかということも論点にしていかなくてはいけないと思います。
中村:今日は、ありがとうございました。依存の問題の支援に携わっている皆さんに大崎さんの話を聞いてもらいたいと思いました。パチンコについての知識を得て、偏見をなくすことが支援者には必要だと思います。私たちの主催するセミナーでお話してもらうことは可能ですか?
大崎:僕はパチンコ業界に恩返しをしなければならないキャリアになってきました。パチンコで不具合が出た方を健全遊技に導くことの一助になることはやらなくてはいけないと思っています。中村さんの企画は面白いと思います。ぜひ協力させてください。
中村:よろしくお願いします。
注釈 (アイエス・フィールドの佐藤嘉一さんの説明)
※1 動画
『【旅ログ】和歌山でジョギングトークしたりホテルでオカルトトークしたり(1人で)』。
https://www.youtube.com/watch?v=HLPR3AR-bbs
所謂「オカルト」(後述)との付き合い方を語っています。
※2 オカルト
「数字が揃うと大当たりとなるぱちんこ遊技機」(以下「デジタル機」)は完全確率、かつ当たりか外れかの抽選を行う穴(「入賞口」)にパチンコ玉が入ることで1回転(回転とはデジタル抽選で盤面上の数字が回る事を言う)、1回転、抽選が行われるために外部要因等によって当たりを導く、または当たりを事前に推測する事(4回転以内に当たりを示唆する例は現状稀に有ります)は機械の性能上有り得ない。
その前提を踏まえ、「45回転の倍数は当たりやすい」や「数字が3・3・9で揃うと100回転以内に当たる」など根拠の全くない情報を「オカルト」と言う。「オカルト」には功罪があり、デジタル機の仕組みを理解ないまま、それを信じたプレイヤーは「これが出たからも少し頑張ってみよう」と根拠もなくお金を注ぎ込むという罪、デジタル機の仕組みを理解した上で大崎さんのように「オカルト」と付き合いながら遊技を楽しむことが出来る功。
※3 パチンコ必勝ガイド
1988年に創刊されたパチンコの攻略雑誌。「オカルト」の説明では「外部要因等によって当たりを導くことは有りえない」と記しているが、誌が世に出始めた昭和から平成初期のぱちんこ遊技機は今とは比べ物にならないほど精密機器の性能が優れず、外部要因により大当たりを導くことや、大当たりを継続させることがバグの解析によって可能だったために「攻略雑誌」としてパチンコメディアの一時代を築く。
また(※4、※5)で後述するバグに頼らない「ボーダー理論」を展開し幅広いユーザーから支持を集める。
※4 千円で〇〇回転
大崎さんも言うようにパチプロのようなプレイヤーでない限り長期的視点でみて一般プレイヤーの殆どが負ける。競馬や宝くじと同じで提供者が赤字続きでは事業の継続は出来ないからである。ただ、(長期的にみた)負け額を圧縮し、少ない金額で大当たりを引き寄せる可能性がある方法があり、それが「ボーダー」と言われる理論で、勝てる可能性があるか無いかのボーダーラインのこと。あくまでも理論値ではあるが、機種ごとに解析された数値と照らし合わせ1,000円で〇〇回転未満の台を打つと勝利期待度は下がり、〇〇回転を上回る台を打つと勝利期待度は高まる。こちらの説明は(※5)の中で併せてご説明します。
※5 スペック
現状、ぱちんこ遊技機の大当たり確率の下限値は1/320、1回の大当たりで得られる上限数は1.500玉と法律で定められている。そのほか、大当たりが1回で終了するのか、それとも2回以上継続して大量出玉が得られる確率変動状態に入るのかの割合、確変状態が継続する割合など、機種ごとに設定された性能を「スペック」という。
確率、出玉数、割合、継続率などから1回の大当たりで得られる期待出玉数の平均値を割り出し、その平均値に見合う出玉を出すのに1.000円で〇〇回転するか(その回転数がボーダー)を算出することでより少ない使用金額で大当たりに辿りつくことができる。
※6 1円パチンコ、0.5円パチンコ、0.2円パチンコ
パチンコ店はプレイヤーが遊技するために必要な玉は「売る」のではなく「貸し出す」こと、その貸玉料金単価(以下「レート」)の上限が税別4円と法律で定められている。そのレートを下げることで(以下「低貸し」)懐事情に合った遊技ができるよう、また選択の幅が広がるように2007年頃から低貸しが普及しはじめる。
1.000円で借りることのできる玉数は4円レートでは250玉、1円レートでは1,000玉、0.5円レートでは2.000玉、0.2円レートでは5.000玉となる。市場価格が1箱580円のタバコを玉と交換する際に必要な数が4円レートで145玉、1円レートで580玉、0.5円レートで1.160玉、0.2円レートで2.900玉となる。低貸し専用のスペックという機種は存在せず、4円レートも低貸しも同条件の機種を打つため、レートが低ければ低いほど景品と交換する際に必要な玉数が多くなる。
※7 パチンコ景品は1万円まで
現状、玉と交換できる景品の価格の上限が税別9.600円と法律で定められている。「パチンコで3万円勝った、5万円勝った」などという話を聞くことがあるが、これは先述の上限価格は景品1個に対してのものであり、出玉を現金に交換するための景品1個の最大価格が概ね9.000円となっている東京では、出玉でその景品を1回の交換で4個得ると36.000円の現金と交換することができる。タバコのような一般景品に目を向けてみると、景品コーナーにプレステのソフトは置いてあるのに本体が無い、という光景をよく見かける。もうお分かりかと思うが、ソフト1本、本体1機の価格が税別9.600円を超えるか超えないかに起因している。
2023.01.25 Wednesday10:30
http://onedaypt.jugem.jp/?eid=3943&fbclid=IwAR2ch_Sp_CN7fQ1MVJI0dFAPMJbTj6M93qehhQZem89vLc8FzCzRH-n9aEA
より、許可を得て転載。
ワンデーポートはギャンブル行動症支援のさきがけ。初期は今の自助グループや支援団体がしているように、底つき体験をへて、あるいは気づきを促し、断~を誓い、ハイヤーパワーにすがり、12のステップを踏んでいくミーティングを主軸とする支援を行っていたが、発達問題などが背景にある場合ミーティングがあわないケースが多々あり、むしろ日常に楽しみを見つけ(それがギャンブリングでもいい)、暮らし、生活、余暇を立て直していくこと、その支援をすることに主軸を移した。個人の行動変容を直接促すのではなく、環境調整し生きやすい道をともに探る。
大崎氏は以下にプロフィール。まあまあ、やばくていい人。ほぼ破綻しそうになっては自力回復、新たな道を見つけていく。
パチンコとの健全なつきあい方 大崎一万発さんへのインタビュー
大崎一万発さん プロフィール
1968年高知県生まれ。早稲田大学社会科学部卒後、(株)白夜書房入社。『パチンコ必勝ガイド』編集長を経て、2003年よりフリー。現在は編集者、ライター、パチンコタレントとして多数のファン向けメディアに関わるほか、パチンコ関連のアドバイザー、ホール営業プランナーとしても活躍中。テレビ、ラジオ、連載多数。
YouTubeの『まんぱつ』は登録数7万を超える人気チャンネル。パチンコ業界歴30年を超えるキャリアからの視点で捉え、「依存」のテーマに対しても鋭い切り込みで訴える動画も公開されている。
趣味はランニング。
中村:お久しぶりです。10年以上前に東京都遊技業協同組合のイベントでお会いして以来かと思います。今日は、大崎さんがいまのパチンコをどのように見ているか、依存問題についてどのように考えているか、それとランニングについてのお話をおうかがいしたいと思っています。2年前からYouTubeもやられていますが、12月15日公開された動画※1ではオカルト※2で考えたりする「負けるパチンコは楽しい」とおっしゃっていました。これは依存対策に通じると思いましたが、まずは「負けるパチンコが楽しい」という意味についてはお話してもらえますか?
「負けるパチンコは楽しい」という意味
大崎:僕はもともと『パチンコ必勝ガイド』※3という攻略誌をつくっていた人間なので、パチンコは再現性のある勝ち方の方法論が確立していることを知っています。その方法を身に付けると、パチンコは趣味と実益を両立できる有益なギャンブルになります。ただ、それで稼ごうとするなら、楽しいとか面白い感覚を捨てて、仕事として打つ必要があります。意外に思われるかもしれませんが、パチプロは誰1人面白いと思ってパチンコをやっていないです。彼らにとってパチンコは仕事、会社員の方が「会社に行くのが嫌だなぁ」と同じように、「パチンコ行くのが嫌だなぁ」と思いながら、でも勝たないと給料がもらえないから打ちに行きます。依存とは逆のベクトルだと思います。パチプロの立場から考えると、勝ち方をしっかり身に付けてもらうことで、依存から脱却しましょうというロジックもあるとは思いますが、その勝ち方を身に付ける域に達することができる人は、100人に1人もいないと思います。テクニカルな部分と知識を身につけないとそこまでは行くことができません。僕は、パチプロもやっていたので、勝ち方もわかってはいますが、テクニカルに打つことが、だんだん馬鹿馬鹿しくなってきました。なんで遊びごときで苦労しなくてはいけないのだろうと考えるようになりました。自分が打っている台は、千円で〇〇回転※4だから、理論上は5時間打ったら5千円負けるとわかっていても打つようになりました。勝つことばかり考えるのではなく、開き直って、運や「引き」に身を任せて遊ぶ。でも、自分の打ち方では長期視点で見たら負けることをわかっているから、無理せずほどほどのところで引いておこうと思うようにもなります。2万円使って1万5千円戻ってきたときに、あと5千円追いかけて取り戻そうと考えるのではなく、「5千円負けまで戻したのだから、ここでやめておこう、半日遊んだのだから5千円は置いていこう」と、負けを受け入れることで楽に打てるようになって、のめり込みとは違う感覚でパチンコとの付き合い方ができるようになりました。パチンコはたまたま大きく勝つこともあるし、めちゃくちゃ負けることもあります。でも、ならすと(長期で見ると)、小博打です。大して勝てないです。そんな遊びにのめり込んで、熱狂して身を持ち崩すのは馬鹿げていると思います。ほどよい距離感でちょっと遊んで、残った時間を家族のことだったり、自分の別の趣味だったほうが有意義ではないですか。こういう老成した考え方というのは、パチンコ打ちには理解してもらえません。目先のお金からパチンコをする人が多いので、趣味や遊びとして、ちょっと負けるくらいがいいんだよという感覚にはなかなか行きつかないです。ただ、それをわきまえた上で遊んでくれる大人のプレイヤーさんを育てていくことを考えていかないと、プレイヤーとパチンコ業界のウィンウィンな関係は作れないと思います。
中村:ワンデーポートを利用する人は、すでに借金をしていて、「取り戻すためにパチンコをしていた」という人が多いです。その人たちに、勝つパチンコを教えればよいという考え方もありますが、ギャンブリング障害に該当する人の多くは生活障害や社会適応の問題を抱えています。ですから、勝つことで借金が返済できても、生活や人生が安定したり、満足度が上がらなければ解決にはなりません。むしろ、大崎さんがおっしゃる「負けても面白ければよい」と考えたり、勝てないものにのめり込むことの無駄に気付いて距離を置くことが効果的かつ現実的な向きあい方だと思います。
パチンコは大して勝てません
大崎:パチンコはギャンブルと言い切るのは問題があると思っていて、娯楽の一種です。「遊びですよ」という考え方をベースに置いておくと、娯楽なら使ったお金が戻ってくることはないということになりますよね。パチンコはマクロな視点で見ると1時間千円とか千5百円程度の遊びです。半日遊んで1万円負けるにすぎないわけです。逆に言うと、良い台に座っても半日で1万円程度です。勝てるのはその程度というところに行きつけば解脱できると思います。僕も若い頃は、お小遣いを増やしたいとか、10箱出している人を見て、自分もああなりたいと考えたりしました。パチンコは、そういうそそり方をしてお客さんを集めているわけです。『パチンコ滅亡論』(大崎一万発×ヒロシ・ヤング)の中で「パチンコは大して勝てません」と書きましたが、リアルな話です。これを皆さんにお伝えできれば、のめり込む人はいなくなると思います。パチンコ業界が言ってしまうとお客が来なくなるので、業界の皆さんは口にしませんが、その端境で、苦しまれる人がいるということだと思います。キャンプにお金を使うのと同じように考えてほしいと思います。
中村:ご家族や支援者の皆さんは、1時間に千円とか千五百円の遊びであるとか、娯楽だという考え方は理解していないと思います。
大崎:とんでもない(悪い)遊びだと思っていますか(笑)。
中村:1回行けば必ず2~3万円は負けると思っています。仕事が休みの日だけパチンコに行って、年に300万円負けたという話を信じている家族もいました。本人が負けを誇張することもありますし、他のことにお金を使っているのにすべてパチンコのせいにしている人もいると思います。
大崎:マスコミやパチンコ嫌いな人は極端なことを吹聴したがります。たしかに、極端なところだけ摘まんだら、月に100万円負ける人も勝つ人もいます。0.0何パーセントという極端なところではそういう人もいますが、でもならしたら1時間千数百円です。キャンプに行く人がキャンプ用品を買って、車のガソリン代を使うようなことと同じ遊びです。お金を使ったなりの余暇時間を過ごせるのは、パチンコもキャンプも同じです。
中村:ごくたまに大きく勝つので、パチンコには危険な面もありますが、公営競技やカジノと比べたら、リスクは少ないわけですね。ワンデーポートの利用者の皆さんに、パチンコで勝ったり負けたりして平均1時間にいくら使うと思うかと聞くと、「1時間1万円くらい」と答える人が多いです。問題を抱える人もパチンコの知識を持っているようで持っていません。ところで、最近のパチンコはどんな台が流行っているのですか? パチンコをやったことがない人が、千円、二千円を持っていって遊べる台はありますか?
大崎:パチンコ業界も(出玉が)偏るスペック※5を作ったほうが、極端に出る台はお客さんが熱狂します。いまの台は極端になっていて、ならせば1時間に千数百円の機械でも、1時間に10万円出る機械があります。一方で、ご年配の方やゆっくり遊びたい方の向けに、それほど負けない台もたくさんあります。古き良き時代のパチンコのような出玉の波になります。1円パチンコ、0.5円パチンコ、0.2円※6パチンコまであります。レートは違っても大当たりのプロセスはまったく同じですから、お金をかけないで遊ぶこともできるわけです。こういう、娯楽としてのパチンコの姿を、偏見がある人や、パチンコアンチに体験いただけるといいなと思います。周りの人にパチンコの正しい知識を知ってもらい、「こういう遊び方をしたほうが良いよね」という形をつくらないといけないと思います。「ヤバい、マズい、パチンコに行くな」と蓋をしてしまうのは、パチンコをやる人にも、業界にも不幸なことだと思います。
国の対策と中村さんたちの対策の違いを理解していなかった
中村:新聞やテレビで取り上げる「体験談」は、パチンコが悪だと認識している人の話を取り上げる傾向がありますが、問題を抱えている人は痛い思いをしてもパチンコが好きです。人の趣味趣向はそんなに簡単に変えられるとは思えません。パチンコが悪だとか、とんでもないギャンブルだという認識が社会にあると、問題を抱えている人は自己否定しなければならないですし、家族や支援者に対して正直に話ができなくなると思います。パチンコの偏った情報や間違った知識が社会に広がることは、依存問題にプラスに働くことはないと思います。
大崎:パチンコにのめり込んだけれど、自然に戻ってくることができる人もいます。でも、そこに戻ることができない人もいます。それが気質的な問題なのか、知識不足なのか、周囲のサポート不足なのかいろいろなのだと思いますが、「ああ、パチンコに熱くなるなんてしょうもない」と戻ってくることができないのは何故なのか分析する必要があると思います。それぞれ、原因は違うわけですから。
中村:「自然に戻ってくることができる」という認識は、パチンコをやり続けている方には見えることなのだと思いますが、自助グループや医療機関に行く人は自然に戻っている人(自己解決している人)ではないので、自己解決を否定します。国の対策の指針であるギャンブル等依存症対策推進基本計画では、自己解決している人がいることを想定していません。「ギャンブル等依存症になったら脳が変わるとか、病気なので相談に行きましょう」と啓発しています。恐ろしいくらいに根拠もなく、恐ろしいくらい実態とズレています。
大崎:篠原菊紀先生と対談したときも、元々気質的問題がある方が多くて、その人たちが、たまたまパチンコに出会って問題になってしまうと伺いました。だから、パチンコが悪であるという考えは根本的に間違っているわけですよね。できるかどうかは別として、パチンコをやる前にスクリーニングして、パチンコをやらせないような仕組みをつくる必要があるのではないでしょうか。
中村:ケースバイケースだと思います。当然、パチンコをやめる支援も必要ですが、ワンデーポートの活動を続ける中で、金銭管理などをして低貸のパチンコで遊んでも問題にならないようにする支援も必要だということに気付きました。パチンコだけが楽しみしかない人に、新たな娯楽を示さずに居場所を奪うようなことは問題を悪化させるリスクもあります。ワンデーポートでは、入所中は禁止していますが、アパートに自立して長期的に金銭管理をしている人の中には、パチンコ代としてお金を渡している人もいます。やめるか続けるかは、最終的には本人が決めることだと思います。絶対に禁止にしてしまうと、隠れてパチンコをすることになるので、信頼関係は築くことができないです。リカバリーサポート・ネットワークでの電話相談でも、適度にパチンコと付き合うような相談をしていると思います。一方、国や自助グループの考え方は、ギャンブルをやることは病気の再発になってしまいます。
大崎:パチンコは不遇な環境やストレスを抱える人にとって一種の安らぎや居場所になっていることはパチンコの存在意義だと思いますが、国としては、悪いものとして一括りにしたいのですかね。
中村:ギャンブル等依存症対策推進基本計画は物質依存と同じくくりで考えています。アルコール依存症や薬物依存症の考え方では、適度に遊ぶという支援には行きつかないと思います。最近、危惧していることは、パチンコ業界の人たちに(病気ととらえる)国の方針に盲目的に従う人が増えていると感じることです。基本計画では、パチンコは危険で悪い遊びとは言っていませんが、支援や治療の内容を考えると、パチンコは悪というとらえ方に行きついてしまう可能性もあります。
大崎:国の対策と中村さんたちの対策の違いを僕自身が理解していないところがあったと思います。ひとくくりに考えていました。篠原先生が国の対策に問題があるという話についてピンと来ていないところがあったのですが、中村さんの話を聞いてよくわかりました。
中村:健全遊技とのめり込みの予防、自己解決と支援はつながっていると思います。本来、パチンコ業界の依存対策は、健全遊技を促すことも含まれると思います。パチンコ業界は前向きに取り組める要素もあるはずです。
大崎:パチンコ業界の人たちは、(のめり込んで)一部に救われない人が出てくるけど、その人のことに踏み込みたくないのが本音だと思います。この問題に取り組むことは、得がなく損なことだと。僕もいまの立場がなく、ただパチンコユーザー視線では、ハマる人の責任だという感覚はゼロではないです。でも、業界がそう言い捨ててしまうのは問題だと思います。
中村:パチンコ業界で依存の問題に対してはじめに声を上げたセントラルカンパニーの力武一郎さんや、ワンデーポートに支援してくれている東京都遊技業協同組合の皆様は俯瞰して見ていて、健全遊技とつながるという認識があると思いますが、いまの国の対策から入ると形だけの対策になってしまうような気がします。
大崎:商売に影響が出なければよいとなってしまうと、行政へのポーズでしかなくなりますね。真剣に依存問題に取り組むということではなくなりますね。
ランニング
中村:11月27日に私たちも参加した小江戸川越ハーフマラソンに大崎さんも参加されていましたが、いつから走っているのですか?
大崎:5年くらい前、50歳手前で走りはじめました。太ってはいなかったですが、健康診断で、脂肪肝と、血中のコレステロール値も高いと言われたことがきっかけです。考えてみれば何も運動をしていなくて、年齢的にもセルフケアをしないといけないと思ってはいたんですが、性格的に機具を買ったりジムに行っても続かないのはわかっていたので、いちばん手軽にできるランニングにしたんです。それまでランニングはもっとも嫌いな運動でしたけど、しんどかったら歩けばいいやと。完全に素人だったので、最初は1kmも走ることができませんでしたが、走っているうちに気持ちが良くなって、だんだん面白くなりました。興味が湧いて、シューズを買ってみようとか、カッコいいウェアを買ってみようかなとなっていくと、趣味の域に入り走ることが生活の一部になりました。走ることがトレーニングではなく、「好きだから」「気持ちが良いから」というところに到達できたから続いているんだと思います。出張のときもシューズとウェアを持っていきます。はじめて行く場所で走ると土地勘も養えるし、距離感も掴めます。どこに行ってもランニングしている人を見かけますし、シンパシ―のようなものを感じます。僕は奥さんにも走ろうと言うのですけれど、しんどいというところから出ることができないので、嫌だと言ってすぐやめてしまいます。早歩きくらいでもいいので、やっているうちに到達するものだと思うのですが……。ランニング依存という言葉もある通り、行き過ぎてしまうとガタが来ます。僕も月に300km走ろうということもありましたが、自分の適性の距離数やペースをつかんでくると娯楽の一つとしてのランニングになります。フルマラソンを何時間で走ろうとか記録をつくろうとかいう本がありますが、自分は無理をすると続かないので、ダラダラ走っているだけです。だから何年も走ることができていると思います。生涯の娯楽になって人生の楽しみが一つ増えたと思っています。パチンコもそういう位置づけになってくれたら良いと思います。ランニングは苦しいものという誤解や偏見がありましたが、自分の習慣になったときに、パチンコを生活の一部として楽しんでいる高齢者の方の気持ちが共感できたように思いました。
中村:私は無理をしすぎてしばらく走っていない時期があったので、大崎さんの話は、教訓という意味を含めてよくわかります。私も走ることで気付くことはたくさんあります。ランニングを趣味にしている人には、大酒飲みが多いのですが、アルコール依存症で亡くなったとか入院したという人を見たことがありません。それどころか、とても幸せな生活をしているように見えます。依存症の回復や治療という以前に、走って健康であることがとても大事なことだと感じます。アルコール依存症は医療の問題だとされていますが、実は人生や健康の問題としてとらえるべきではないかと思っています。もちろん、ギャンブルも。
大崎:僕も走った後にレモンサワーを飲むのが楽しみです。モチベーションは不健康なのかもしれませんが、走ったことで、頭のモヤモヤしたものが吹っ飛び、達成感を得られます。もし、走っていなければ、熟年鬱のようなことになっていたかもしれないと思うことがあります。ただし、若干のストイックさは必要になってくるので、パチンコ打ちとの相性はよくないとは思います。パチンコ大好きで、ランニングをやっている人は希少です。両立している人はたまにいますが、そういう人のパチンコ感は老成しています。趣味の一つとして、勝ち負けではないパチンコを楽しんでいます。
パチンコ店をランニングベースの場にできないか
中村:パチンコホールにシャワーとか着替えを入れるロッカーを置くことはできないですか。
大崎:ランニングベース的な役割な場所ですね。それ良いですよ。全国津々浦々にパチンコ店はあるわけですし、いまパチンコホールは防災設備の拠点としての機能を備える取り組みが進んでいます。食料や飲料水の備蓄をしているホールさんが増えています。災害時に駐車場を開放して避難できるような取り組みも広がっています。ランニングのベースというのは、その発展形だと思います。娯楽の発展形として余力を持って運営してもらうと、パチンコの意義が上がってくると思います。会員カードを作ったら、使えますよという形でもよいかもしれません。パチンコホールではご年配の方向けに、健康診断のサービスを行っているところもあります。血圧を測ってくれたり、保健師さんが相談に乗ってくれたりすることもあります。その延長のような形で、「運動はどうでしょう」みたいなことができると面白いと思います。スポーツ用品メーカーを巻き込めるかもしれません。パチンコ景品は1万円まで※7まで置くことができるので、シューズを置いてもよいかもしれません。パチンコホールのオーナーはスポーツをやる人が多いので、お客さんに対しても普及していきましょうよという考え方は不自然ではないと思います。
中村:ホール内に篠原先生が健康について解説したパンフレットを置いてもらうとか、ウォーキングやランニング教室を開けば、健全遊技推進に寄与するのではないでしょうか。
大崎:そういう提案をしていきましょうよ。
パチンコの存在意義
中村:大崎さんがホールでパチンコを打たれていて、必要な居場所になっていると思うエピソードがあれば聞かせてもらえますか。
大崎:店員さんと話をすることで、鬱々とした気持ちを晴らして前向きに生きていくことができるようになったという話をよく聞きます。末期のガンでパチンコが好きなお父さんがいて、その子どもはパチンコをやらないで偏見を持っていたのだけれど、お父さんがどうしても行きたいというので、パチンコに連れて行ったそうです。そしたら、お父さんと店員さんの関係が見えて、ほんとうに良い場所で遊んでいたということがわかり、パチンコのイメージが変わったそうです。
中村:娯楽が少ない地方都市では、パチンコホールが高齢者の人たちの娯楽や居場所となっているということはあるのでしょうか。
大崎:地方のホールでは、1円パチンコ、0.5円パチンコには、おじいちゃん、おばあちゃんがたくさん来ています。お店としては、商売的には1円パチンコはうま味がありません。でも、毎日来て店員さんと話をする居場所を残さなくてはいけないという使命感が現場にはあります。
中村:ボウリング場がそういう役割を果たしているとは思いますが、いまボウリング場もどんどん閉店しています。高齢者の方の娯楽や居場所の問題はこれからの社会的な課題になるような気がします。
大崎:これからはパチンコ屋さんしかなくなってしまうかもしれません。
中村:高齢者の集まる場所が施設や病院だけになってしまうのは悲しいと思います。
大崎:病院の待合所的な空気感があるパチンコホールもあります。お互いの生存確認をしたりできます。10日間みないと「あの人どうしたのだろう」となって、家を訪ねてみたりすることもあるそうです。パチンコホールは、高齢化社会の中で娯楽として毎日の刺激になるような価値観に落とし込んでいくように持っていかないと産業としても成り立っていかないと思います。地域の社交場的な存在であるパチンコホールは減ってきています。そうなったら、お年寄りの方の行く場所がなくなります。認知症が進んでしまう人もいるかもしれません。そうなると医療費の増大につながって行きます。娯楽、リハビリの場としてのパチンコホールをいかに残していくかということも論点にしていかなくてはいけないと思います。
中村:今日は、ありがとうございました。依存の問題の支援に携わっている皆さんに大崎さんの話を聞いてもらいたいと思いました。パチンコについての知識を得て、偏見をなくすことが支援者には必要だと思います。私たちの主催するセミナーでお話してもらうことは可能ですか?
大崎:僕はパチンコ業界に恩返しをしなければならないキャリアになってきました。パチンコで不具合が出た方を健全遊技に導くことの一助になることはやらなくてはいけないと思っています。中村さんの企画は面白いと思います。ぜひ協力させてください。
中村:よろしくお願いします。
注釈 (アイエス・フィールドの佐藤嘉一さんの説明)
※1 動画
『【旅ログ】和歌山でジョギングトークしたりホテルでオカルトトークしたり(1人で)』。
https://www.youtube.com/watch?v=HLPR3AR-bbs
所謂「オカルト」(後述)との付き合い方を語っています。
※2 オカルト
「数字が揃うと大当たりとなるぱちんこ遊技機」(以下「デジタル機」)は完全確率、かつ当たりか外れかの抽選を行う穴(「入賞口」)にパチンコ玉が入ることで1回転(回転とはデジタル抽選で盤面上の数字が回る事を言う)、1回転、抽選が行われるために外部要因等によって当たりを導く、または当たりを事前に推測する事(4回転以内に当たりを示唆する例は現状稀に有ります)は機械の性能上有り得ない。
その前提を踏まえ、「45回転の倍数は当たりやすい」や「数字が3・3・9で揃うと100回転以内に当たる」など根拠の全くない情報を「オカルト」と言う。「オカルト」には功罪があり、デジタル機の仕組みを理解ないまま、それを信じたプレイヤーは「これが出たからも少し頑張ってみよう」と根拠もなくお金を注ぎ込むという罪、デジタル機の仕組みを理解した上で大崎さんのように「オカルト」と付き合いながら遊技を楽しむことが出来る功。
※3 パチンコ必勝ガイド
1988年に創刊されたパチンコの攻略雑誌。「オカルト」の説明では「外部要因等によって当たりを導くことは有りえない」と記しているが、誌が世に出始めた昭和から平成初期のぱちんこ遊技機は今とは比べ物にならないほど精密機器の性能が優れず、外部要因により大当たりを導くことや、大当たりを継続させることがバグの解析によって可能だったために「攻略雑誌」としてパチンコメディアの一時代を築く。
また(※4、※5)で後述するバグに頼らない「ボーダー理論」を展開し幅広いユーザーから支持を集める。
※4 千円で〇〇回転
大崎さんも言うようにパチプロのようなプレイヤーでない限り長期的視点でみて一般プレイヤーの殆どが負ける。競馬や宝くじと同じで提供者が赤字続きでは事業の継続は出来ないからである。ただ、(長期的にみた)負け額を圧縮し、少ない金額で大当たりを引き寄せる可能性がある方法があり、それが「ボーダー」と言われる理論で、勝てる可能性があるか無いかのボーダーラインのこと。あくまでも理論値ではあるが、機種ごとに解析された数値と照らし合わせ1,000円で〇〇回転未満の台を打つと勝利期待度は下がり、〇〇回転を上回る台を打つと勝利期待度は高まる。こちらの説明は(※5)の中で併せてご説明します。
※5 スペック
現状、ぱちんこ遊技機の大当たり確率の下限値は1/320、1回の大当たりで得られる上限数は1.500玉と法律で定められている。そのほか、大当たりが1回で終了するのか、それとも2回以上継続して大量出玉が得られる確率変動状態に入るのかの割合、確変状態が継続する割合など、機種ごとに設定された性能を「スペック」という。
確率、出玉数、割合、継続率などから1回の大当たりで得られる期待出玉数の平均値を割り出し、その平均値に見合う出玉を出すのに1.000円で〇〇回転するか(その回転数がボーダー)を算出することでより少ない使用金額で大当たりに辿りつくことができる。
※6 1円パチンコ、0.5円パチンコ、0.2円パチンコ
パチンコ店はプレイヤーが遊技するために必要な玉は「売る」のではなく「貸し出す」こと、その貸玉料金単価(以下「レート」)の上限が税別4円と法律で定められている。そのレートを下げることで(以下「低貸し」)懐事情に合った遊技ができるよう、また選択の幅が広がるように2007年頃から低貸しが普及しはじめる。
1.000円で借りることのできる玉数は4円レートでは250玉、1円レートでは1,000玉、0.5円レートでは2.000玉、0.2円レートでは5.000玉となる。市場価格が1箱580円のタバコを玉と交換する際に必要な数が4円レートで145玉、1円レートで580玉、0.5円レートで1.160玉、0.2円レートで2.900玉となる。低貸し専用のスペックという機種は存在せず、4円レートも低貸しも同条件の機種を打つため、レートが低ければ低いほど景品と交換する際に必要な玉数が多くなる。
※7 パチンコ景品は1万円まで
現状、玉と交換できる景品の価格の上限が税別9.600円と法律で定められている。「パチンコで3万円勝った、5万円勝った」などという話を聞くことがあるが、これは先述の上限価格は景品1個に対してのものであり、出玉を現金に交換するための景品1個の最大価格が概ね9.000円となっている東京では、出玉でその景品を1回の交換で4個得ると36.000円の現金と交換することができる。タバコのような一般景品に目を向けてみると、景品コーナーにプレステのソフトは置いてあるのに本体が無い、という光景をよく見かける。もうお分かりかと思うが、ソフト1本、本体1機の価格が税別9.600円を超えるか超えないかに起因している。
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