スマホ依存について聞かれた

 まず嗜癖障害(行動への依存:依存という言葉は本来薬物限定なのでわが国の使い方がおかしいのですが)が定義されているのは、ギャンブル行動とゲーム行動で、いずれも①コントロール障害②その行動が最優先されている③障害が生じていっるにもかかわらず継続または拡大、の全ても満たしかつ、顕著な障害や苦痛がある、場合に限ります。
 そこまで至らない場合はhazardous~ing。障害や疾病ではなく、運動不足や不適切な食事習慣と同列の健康上の危うい使用法です(WHO2022:ICD11)(https://note.com/s96hige/n/nf611f7961112)。このWHOのいう「危うい~」をわが国のマスコミも学術界もほぼ無視、または等閑視してきました。
 それはさておき、スマホでの嗜癖障害は正式には定義されていません。定義のようなチェック項目は、WHOの定義から見れば「ゆるゆる」のギャンブリング障害疑いやゲーム障害疑いを援用したものです。もっとせっかくに言えば、DSM-5系の症候チェック前文の「重大な障害や苦痛につながるような~」を無視して、症候チェックだけで構成したものです。しかも多くはYES/NOの二値チェックで、ゆえに「重大」な程度がつたわりません。そういうことはなくもない、でYES,カウントされます。ですから、そういうチェックリスト程度を、あたかも疾病や障害のように扱うのは間違っています。あえて類推すれば、上記のWHOの障害定義の基準に準じるのが正しいと思います。
 世の中ではスマホ脳とかスマホ依存とか軽々に使っていますが、嗜癖障害を意味するなら限定的に使うべきです。また、脳に与える影響は日本での紹介と異なり、最近のものでは肯定的なものも多いです。論文検索生成AI、concensusで2022年のものをいくつか記載しておきます。これはこれで偏ったチョイスですが(コンセンサスの)。

このテキストは、スマートフォンの子供たちに対するポジティブな影響について述べています。スマートフォンは、子供たちの学習に役立ち、洞察力を高め、まだ知られていないことを知ることができ、コミュニケーションや情報検索のために密接な接触が可能であるとされています。
Putri, Y.U., & Rahman, R. (2022). Dampak Smartphone Terhadap Akhlak Anak. An-Nuha.

このテキストは、スマートフォンが学生の特性に適合しているため、学生がスピーキングスキルを向上させ、知識を広げ、その他の英語の練習を発展させるための学習メディアとして使用できることを述べています。
Paiman, P., Yundayani, A., & Suciati, S. (2022). The Use of Smartphone in Improving the Students’ Speaking Skill. AL-ISHLAH: Jurnal Pendidikan.

この文章は、スマートフォンの無自覚な使用によって、つまり他の活動との同時使用や夜遅くの使用によって、生活の質の低下と関連があることを示唆しています。
Sela, A., Rozenboim, N.A., & Ben-Gal, H.C. (2022). Smartphone use behavior and quality of life: What is the role of awareness? PLoS ONE, 17.

以下は2020年ですが、因果を考える上では重要です。スマホ使用⇒依存⇒生活障害、苦痛、という図式は因果の方向が相当に怪しいと考えられます。世界的行動嗜癖対策の潮流は、リスクの高い人をいかにスクリーニングして予防策を届けるのか、でう。

この文は、うつ病や不安症の人々がスマートフォンを過剰に使用する理由について、ネガティブな感情状態を説明するために、退屈への傾向と反芻が重要な変数である可能性があることを示しています。退屈への傾向とは、人が退屈を感じやすい傾向のことであり、反芻とは、過去の出来事や自分自身に関する考えを繰り返し考えることを指します。
Wang, Y., Yang, H., Montag, C., & Elhai, J.D. (2020). Boredom proneness and rumination mediate relationships between depression and anxiety with problematic smartphone use severity. Current Psychology, 41, 5287 - 5297.

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