アルツハイマー病、学歴、レカネマブ

アルツハイマー病
アルツハイマー病は認知症の6割以上を占める病気です。最初は軽度の物忘れから始まることが多く、病気が進行するにつれて、日常的なタスクの実行が困難になります。新しい情報を覚えるのが難しくなることから始まり、徐々に過去の思い出や知っている人々の名前も忘れるようになります。判断力や思考能力の低下が見られ、日常的な判断が難しくなります。怒りやすくなったり、抑うつ、ひきこもりなどの行動や気分の変化を示すこともあります。言葉を見つけるのが難しくなり、会話が混乱したり、同じことを繰り返すことが増えます。日付や季節、現在の場所を忘れることもあります。病気の後期には、歩行や食事、身だしなみのケアなどの日常的なタスクが難しくなります。
アルツハイマー病と学歴
ところで、アルツハイマー病は増えているのでしょうか。
実数は増えています。しかし、年齢層別の発症率を見ると、実は減っていることが報告されています。高齢化が進んでいるので、率が下がっても実数は増えているというのです。
発生率が減った原因のひとつとして、世の中の高学歴化があげられています。高い学歴や定期的な知的活動が認知的な予備力を高め、脳に損傷が起きても症状としてあらわれにくい、高学歴者の方が認知症に予防的に働く健康習慣があるなどによるのではないかと考えられています。
みなさんやお子さんの時代では
さて、みなさんご存じかと思いますが、先ごろアルツハイマー病の原因に直接的に働きかける治療薬が承認されました。レカネマブと言います。
これはアルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβを減らす薬で、早期の患者さんへの二週に一回の点滴、一年半で、症状の悪化を27%程度抑え、トータル2,3年は進行を遅らせると推定されています。
現在、普通の注射での効果の検証も行われつつあり有望なようです。さらにアミロイドβは発症の20年ほど前から蓄積が始まっていることがわかっているので、症状が出るはるか前からの投与が有効である可能性があり、その治験も行われています。他の治療薬も続々登場しそうで、より効果的な薬や投薬タイミングの研究、開発が進んでいくでしょう。
ところで、アミロイドβの蓄積を確かめるには、脳せき髄液を背中からとったり、PETスキャンを行う必要があり、身体的、金銭的な負担が大きいのが現状です。しかし、島津製作所の田中先生らが開発した血液での判定が有望で、血液検査と注射の組み合わせで予防的な利用が広まっていくと期待されています。
2013年時点では70代後半で1割強、80代後半では4割、90代前半では5割強、95歳以上で7割強が認知症を発症していますが、60代後半くらいから治療が開始されるようなら、アルツハイマー病の激減が期待できるかもしれません。
みなさんやお子さんはアルツハイマー病を心配しなくてもいい時代を生きていけるのかもしれません。

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