ひらめき云々

Q: デスクに向かって何時間も考え続けて煮詰まっている時、脳はどんな状況なのでしょうか?
考え始めや材料があって考えている最中は前頭前野を中心とする実行制御ネットワークが活性化します。何か課題を解こうとする時に活動するネットワークです。しかし、ここが活性化していられる時間は案外に短く、考えの種が尽きた感じの時には前頭前野はほぼ鎮静化します。下手な考え休むに似たり、というのが煮詰まっている時です。

Q:脳科学の視点から、状況を打開するコツはありますか?
考え詰めても糸口が見つからない時には、デフォルトモードネットワークを働かせることです。これはぼんやりしているときなどに働くネットワークですが、昔の記憶や経験、情報、自分の体験などを、あれこれ回想させてくれます。マインドワンダリング、心の放浪などといいます。このネットワークの働きによって、意識的には気づけなかったつながりが見いだせたりします。


Q:どうすれば脳を「デフォルトモードネットワーク」という状態にできるのでしょうか?
【デフォルトモードネットワークが活性化する方法】
・ぼんやりする
・散歩する、歩き回る
・トイレに行く
・水回りの掃除をする
・料理をする
・音楽を聴く
あるいはお風呂に入るとか、ぼんやり気持ちや考えが放浪するような時、デフォルトモードネットワークが働きます。まばたきも役立つようです、疲れたほうがいい。考え詰めて疲れたときもチャンス。

Qぼんやりする、と歩き回る、は一見すると真逆の行動にも見えますが、どんな効果があるのでしょうか?
実際、散歩とか歩き回っているときには、前頭前野は鎮静化します。
アクティブリラックスと言って運動している時とか、何かを無心でしている時とかでもDMNははたらきます。

Q:トイレに行く、というのはどうですか?
これも同様です。放尿中とか、便座に座っている時とかもDMNに入りやすくなります。
ルーティンはそういう効果があります。

Q:水回りの掃除、とありますが、掃除の中で特に「水回りの掃除」が良い理由は…?
水回りが特にということではありません。同じような定番の動作を繰り返せばDMNに入りやすくなります。

Q:料理については、どんな作業がどう効果的なのでしょうか?
複雑ではなく、慣れた手順で、無心にできればいいです。

Q:音楽はどのような時に、どんな音楽を聴くとデフォルトモードネットワークが活性化するのでしょうか?
無心に聞けるような音楽だとひらめきテストの成績が向上します。
頭を使う音楽はダメです。

Q:新しい仕事や知識を詰め込んでいる時、特に人の名前が思い出せないなど、物忘れも多くなる気がしますが、「デフォルトモードネットワーク」はこうした脳のメモリ不足のような状況にも有効なのでしょうか…?

せいぜい3,4枚の容量しかない脳のメモ帳がいっぱいいっぱいになっていて、柔軟な発想ができなくなったり、ちょっと脳にメモしておくのが厳しくなったりしている時なら、DMNうんぬんより休むことが有効です。

Q:このデフォルトモードネットワークは、こうした行動をとることで誰でも活性化して良いアイデアが浮かぶものなのでしょうか…?
ひらめきは、自分の脳の中に蓄えられた知識や情報の新たなつながりを見出すだけなので、なんの材料もなければひらめくもなにも来ません。
また、大事なのは、ひらめきが個体の脳でおきるというかんがえかたは捨てたほうがいいことです。ひらめきは関連知識や目的を抱えている集団的な脳のネットワークのどこかで確率的に生じます。ですから、自分のひらめき力だけを上げようという試みはうまくなく、ひらめきの確率が上がるよう組織や知識ネットワークのオープン化を進めることがだいじです。

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