「坂(さか)ちゃんのずくだせえぶりでぃ〜還暦!坂ちゃん“アフター60”を考えるweek〜」メモ
この度別件でご出演をお願いしたくご連絡いたしました。
パーソナリティの坂橋克明が来月1月に還暦を迎えます。
そこで来年1月27日からの5日間は「60歳以降をよりよく生きる」をテーマに
「坂(さか)ちゃんのずくだせえぶりでぃ〜還暦!坂ちゃん“アフター60”を考えるweek〜」として番組展開をします。
その中でひる12 時半〜のコーナー「坂ちゃんのずくだせ還暦トーク!」の
一曜日は篠原先生に「60歳からの脳」について話をお聞きしたいと考えております。
具体的には、
① 脳科学的には60歳ころから脳(形状や働き)はどう変化するのか
ちょっと記憶しておいてあれこれする力が40,60で大きく変わる
側頭葉内側と前頭前野の萎縮、白質の微細構造の劣化⇔スーパーエイジャー
最近の研究で細胞や組織、生体液に含まれるストレス、再生、炎症に関与するたんぱく質が、57歳、70歳、78歳で変わることも報告されている
60歳以降で免疫調整や糖代謝が急速に変わる(44歳で心血管、脂質、アルコール代謝)
。
ブレビカン(BCAN)(β=-0.838、P=2.63×10-10)と成長分化因子15(β=0.825、P=3.48×10-11)は、認知症、脳卒中、運動機能と最も有意な複数の関連
② それによって肉体や記憶、精神的な影響はあるのか
ど忘れ、もの忘れの増加、反応速度の低下、注意力の低下、免疫力の低下、血糖値上昇、歩行速度の低下、
③ 今後行わない方がいい、先生が考える脳に悪い習慣(考え方・行動)とは?
歳だから、歳だから無理という固定観念、挑戦志向、感情の豊かさ
運動不足
④ 今後行った方がいい、脳に良い習慣とは?
歩行速度を維持または高める活動、バランスのいい食事、生活習慣病の予防や治療、頭を使う活動、チャレンジ
⑤ 衰えた脳を若返らせることはできるのか?
脳は可塑性が高いので90過ぎてもトレーニングできる
⑥ 坂橋を含め、60歳以上の方に脳科学者から健康に生きるためのアドバイス
歳だから、といわず、身体的にも脳的にもチャレンジする
もちろん個人差はあるので統計的な情報で結構です。
概要は添付の資料をご覧ください。
出演といっても電話で10~15分程度、事前録音の形です。
「集中力」のピークは43歳。
「他人の感情を読み取る能力」は48歳。
「新しい情報を理解する能力」は50歳。
「語彙力」は67歳。
1. 脳体積の減少・萎縮
脳全体の容積減少
脳は加齢とともに萎縮し、体積がやや減少していきます。特に前頭葉(意思決定・注意・自己制御などを担う)や側頭葉(記憶を司る海馬を含む)は変化の影響を受けやすいとされます。60代以降になると、この傾向がさらに進行しやすくなります。
灰白質・白質の変化
脳の灰白質(神経細胞の本体が主に集まる部分)や白質(神経細胞同士をつなぐ軸索が集まる部分)ともに、加齢により少しずつ減少・変性していきます。灰白質の変化は認知機能、白質の変化は情報伝達のスピードなどに影響を及ぼすと考えられています。
2. 神経細胞レベルでの変化
シナプスの減少
神経細胞同士の接続(シナプス)の数は加齢に伴い減少傾向を示します。シナプスの機能低下は、学習・記憶機能や注意力・処理速度といったさまざまな認知機能の低下につながる要因の一つといわれています。
神経伝達物質の変化
ドーパミン、セロトニン、アセチルコリンなどの神経伝達物質の産生量や受容体の感受性が変化することも報告されています。特にドーパミンは運動や報酬系、意思決定などに関わるため、減少すると注意力やモチベーションの低下が生じやすくなります。
タンパク質の蓄積(老人斑・神経原線維変化など)
加齢が進むと、アミロイドβやタウといったタンパク質が脳内に蓄積しやすくなる傾向があります。これはアルツハイマー型認知症の特徴的な所見としても知られていますが、健康な高齢者でもある程度の蓄積がみられる場合があります。
3. 血管や代謝の変化
脳血流量の低下
脳を含む全身の血管は加齢とともに硬化や狭窄が進むため、局所的に血流量が低下しやすくなります。血液が運ぶ酸素や栄養が不足すると、脳細胞の機能が低下しやすくなります。
脳白質病変(白質高信号)
MRIなどで加齢による白質病変(白質高信号として映る)を認めることが増えます。これは脳の細い血管の動脈硬化などによる血流低下が原因とされ、認知機能や運動機能の低下につながるリスクとなります。
エネルギー代謝の変化
脳はグルコース(ブドウ糖)を主たるエネルギー源としていますが、加齢に伴う血管や神経の変性は代謝効率の低下にもつながります。エネルギー消費量が減ることで、脳活動のピークが低下するなどの影響が見られることがあります。
4. 認知機能への影響
記憶力の変化
新しい情報を覚える「エピソード記憶」が特に影響を受けやすく、60代以降では物覚えの悪さや物忘れといった訴えが増えます。ただし、日常生活を遂行する程度の記憶力は個人差も大きく、「熟練した知識の活用(結晶性知能)」は比較的維持されやすいと言われます。
処理速度や注意機能の低下
情報処理速度が遅くなったり、集中力や注意力が低下したりする傾向があります。複数の課題を同時に行うマルチタスクは若年時に比べ困難を感じることが多くなります。
実行機能(エグゼクティブ機能)の低下
計画・判断・柔軟な思考といった、前頭葉を主とする高次認知機能が加齢とともに弱まることがあります。これにより、難しい問題に対処する際に時間がかかったり、うっかりミスをしやすくなったりします。
5. 個人差と予防・対策
個人差の大きさ
脳の加齢変化は万人に起こる一方、その進行度や認知機能への影響には大きな個人差があります。遺伝的要素、生活習慣(運動、食事、睡眠、社会参加など)、全身疾患の有無など、さまざまな要因が関わっています。
健康的な生活習慣
定期的な運動:有酸素運動(ウォーキング・水泳など)は血流を改善し、脳の健康を保つ一助となります。
バランスの良い食事:地中海食や和食など、野菜や魚、オリーブオイルなどを中心とした食事が脳血管系の健康に有益とされます。
質の良い睡眠:睡眠中に脳内の老廃物が除去される機能(グリンパティック系)が活発になることが知られています。
社会活動・知的活動:人との関わりや読書、趣味活動など、脳を使う機会を増やすことで認知機能を維持しやすくする可能性があります。
認知症と正常加齢の違い
「物忘れ」が年相応なのか、認知症によるものなのかを見極めることは難しいですが、日常生活を自立して送れるかどうかが大きな指標となります。加齢に伴う脳変化は自然なプロセスですが、日常生活に支障が出るほどの記憶障害や判断力の低下が見られる場合は早めに専門医に相談することが大切です。
まとめ
60代以降の脳は、萎縮や血管の変化、神経細胞やシナプスの減少などさまざまな生理的変化を起こしやすくなります。これらの変化は記憶力・注意力・情報処理速度などの認知機能の低下を引き起こす原因の一つと考えられています。ただし、一人ひとりの脳の変化スピードは異なり、生活習慣の改善や社会的・知的活動を活発に行うことによって、ある程度は予防したり進行を遅らせたりできる可能性があります。脳の加齢変化そのものを完全に防ぐことは難しいですが、健康的な生活スタイルを心がけることで、より良い脳の健康と生活の質を維持することが期待されます。
脳年齢の指標であるBrain Age Gap(BAG)に関連するタンパク質を特定し、加齢過程の重要なバイオマーカーを同定したというNat Agingの論文
脳は57, 70, 78歳に最も大きく変化し、この3つのピークでは変化しているプロテオームが異なるため、違うメカニズムで脳年齢が変化
https://www.nature.com/articles/s43587-024-00753-6
プロテオミクスは、脳の老化バイオマーカーを明らかにし、脳の老化に伴う変化を識別することを可能にする。 我々は、健常成人10,949人のマルチモーダル脳画像データを活用し、脳老化の指標である脳年齢差(BAG)を推定した。 2,922個のタンパク質について、4,696人の参加者を対象としたプロテオームワイド関連解析により、BAGと有意に関連する13個のタンパク質が同定され、ストレス、再生、炎症が関与していることが示された。 ブレビカン(BCAN)(β=-0.838、P=2.63×10-10)と成長分化因子15(β=0.825、P=3.48×10-11)は、認知症、脳卒中、運動機能と最も有意な複数の関連を示した。 BCANの調節異常は複数の皮質および皮質下構造に影響を与えた。 メンデルランダム法は、BCANとBAGの因果関係を支持した。 我々は、脳加齢に伴う血漿プロテオームの起伏に富んだ変化を明らかにし、57歳、70歳、78歳における脳加齢に関連した変化のピークをプロファイリングした。 我々の研究結果は、脳老化の血漿プロテオーム・ランドスケープを明らかにし、脳疾患のバイオマーカーを突き止めた。
パーソナリティの坂橋克明が来月1月に還暦を迎えます。
そこで来年1月27日からの5日間は「60歳以降をよりよく生きる」をテーマに
「坂(さか)ちゃんのずくだせえぶりでぃ〜還暦!坂ちゃん“アフター60”を考えるweek〜」として番組展開をします。
その中でひる12 時半〜のコーナー「坂ちゃんのずくだせ還暦トーク!」の
一曜日は篠原先生に「60歳からの脳」について話をお聞きしたいと考えております。
具体的には、
① 脳科学的には60歳ころから脳(形状や働き)はどう変化するのか
ちょっと記憶しておいてあれこれする力が40,60で大きく変わる
側頭葉内側と前頭前野の萎縮、白質の微細構造の劣化⇔スーパーエイジャー
最近の研究で細胞や組織、生体液に含まれるストレス、再生、炎症に関与するたんぱく質が、57歳、70歳、78歳で変わることも報告されている
60歳以降で免疫調整や糖代謝が急速に変わる(44歳で心血管、脂質、アルコール代謝)
。
ブレビカン(BCAN)(β=-0.838、P=2.63×10-10)と成長分化因子15(β=0.825、P=3.48×10-11)は、認知症、脳卒中、運動機能と最も有意な複数の関連
② それによって肉体や記憶、精神的な影響はあるのか
ど忘れ、もの忘れの増加、反応速度の低下、注意力の低下、免疫力の低下、血糖値上昇、歩行速度の低下、
③ 今後行わない方がいい、先生が考える脳に悪い習慣(考え方・行動)とは?
歳だから、歳だから無理という固定観念、挑戦志向、感情の豊かさ
運動不足
④ 今後行った方がいい、脳に良い習慣とは?
歩行速度を維持または高める活動、バランスのいい食事、生活習慣病の予防や治療、頭を使う活動、チャレンジ
⑤ 衰えた脳を若返らせることはできるのか?
脳は可塑性が高いので90過ぎてもトレーニングできる
⑥ 坂橋を含め、60歳以上の方に脳科学者から健康に生きるためのアドバイス
歳だから、といわず、身体的にも脳的にもチャレンジする
もちろん個人差はあるので統計的な情報で結構です。
概要は添付の資料をご覧ください。
出演といっても電話で10~15分程度、事前録音の形です。
「集中力」のピークは43歳。
「他人の感情を読み取る能力」は48歳。
「新しい情報を理解する能力」は50歳。
「語彙力」は67歳。
1. 脳体積の減少・萎縮
脳全体の容積減少
脳は加齢とともに萎縮し、体積がやや減少していきます。特に前頭葉(意思決定・注意・自己制御などを担う)や側頭葉(記憶を司る海馬を含む)は変化の影響を受けやすいとされます。60代以降になると、この傾向がさらに進行しやすくなります。
灰白質・白質の変化
脳の灰白質(神経細胞の本体が主に集まる部分)や白質(神経細胞同士をつなぐ軸索が集まる部分)ともに、加齢により少しずつ減少・変性していきます。灰白質の変化は認知機能、白質の変化は情報伝達のスピードなどに影響を及ぼすと考えられています。
2. 神経細胞レベルでの変化
シナプスの減少
神経細胞同士の接続(シナプス)の数は加齢に伴い減少傾向を示します。シナプスの機能低下は、学習・記憶機能や注意力・処理速度といったさまざまな認知機能の低下につながる要因の一つといわれています。
神経伝達物質の変化
ドーパミン、セロトニン、アセチルコリンなどの神経伝達物質の産生量や受容体の感受性が変化することも報告されています。特にドーパミンは運動や報酬系、意思決定などに関わるため、減少すると注意力やモチベーションの低下が生じやすくなります。
タンパク質の蓄積(老人斑・神経原線維変化など)
加齢が進むと、アミロイドβやタウといったタンパク質が脳内に蓄積しやすくなる傾向があります。これはアルツハイマー型認知症の特徴的な所見としても知られていますが、健康な高齢者でもある程度の蓄積がみられる場合があります。
3. 血管や代謝の変化
脳血流量の低下
脳を含む全身の血管は加齢とともに硬化や狭窄が進むため、局所的に血流量が低下しやすくなります。血液が運ぶ酸素や栄養が不足すると、脳細胞の機能が低下しやすくなります。
脳白質病変(白質高信号)
MRIなどで加齢による白質病変(白質高信号として映る)を認めることが増えます。これは脳の細い血管の動脈硬化などによる血流低下が原因とされ、認知機能や運動機能の低下につながるリスクとなります。
エネルギー代謝の変化
脳はグルコース(ブドウ糖)を主たるエネルギー源としていますが、加齢に伴う血管や神経の変性は代謝効率の低下にもつながります。エネルギー消費量が減ることで、脳活動のピークが低下するなどの影響が見られることがあります。
4. 認知機能への影響
記憶力の変化
新しい情報を覚える「エピソード記憶」が特に影響を受けやすく、60代以降では物覚えの悪さや物忘れといった訴えが増えます。ただし、日常生活を遂行する程度の記憶力は個人差も大きく、「熟練した知識の活用(結晶性知能)」は比較的維持されやすいと言われます。
処理速度や注意機能の低下
情報処理速度が遅くなったり、集中力や注意力が低下したりする傾向があります。複数の課題を同時に行うマルチタスクは若年時に比べ困難を感じることが多くなります。
実行機能(エグゼクティブ機能)の低下
計画・判断・柔軟な思考といった、前頭葉を主とする高次認知機能が加齢とともに弱まることがあります。これにより、難しい問題に対処する際に時間がかかったり、うっかりミスをしやすくなったりします。
5. 個人差と予防・対策
個人差の大きさ
脳の加齢変化は万人に起こる一方、その進行度や認知機能への影響には大きな個人差があります。遺伝的要素、生活習慣(運動、食事、睡眠、社会参加など)、全身疾患の有無など、さまざまな要因が関わっています。
健康的な生活習慣
定期的な運動:有酸素運動(ウォーキング・水泳など)は血流を改善し、脳の健康を保つ一助となります。
バランスの良い食事:地中海食や和食など、野菜や魚、オリーブオイルなどを中心とした食事が脳血管系の健康に有益とされます。
質の良い睡眠:睡眠中に脳内の老廃物が除去される機能(グリンパティック系)が活発になることが知られています。
社会活動・知的活動:人との関わりや読書、趣味活動など、脳を使う機会を増やすことで認知機能を維持しやすくする可能性があります。
認知症と正常加齢の違い
「物忘れ」が年相応なのか、認知症によるものなのかを見極めることは難しいですが、日常生活を自立して送れるかどうかが大きな指標となります。加齢に伴う脳変化は自然なプロセスですが、日常生活に支障が出るほどの記憶障害や判断力の低下が見られる場合は早めに専門医に相談することが大切です。
まとめ
60代以降の脳は、萎縮や血管の変化、神経細胞やシナプスの減少などさまざまな生理的変化を起こしやすくなります。これらの変化は記憶力・注意力・情報処理速度などの認知機能の低下を引き起こす原因の一つと考えられています。ただし、一人ひとりの脳の変化スピードは異なり、生活習慣の改善や社会的・知的活動を活発に行うことによって、ある程度は予防したり進行を遅らせたりできる可能性があります。脳の加齢変化そのものを完全に防ぐことは難しいですが、健康的な生活スタイルを心がけることで、より良い脳の健康と生活の質を維持することが期待されます。
脳年齢の指標であるBrain Age Gap(BAG)に関連するタンパク質を特定し、加齢過程の重要なバイオマーカーを同定したというNat Agingの論文
脳は57, 70, 78歳に最も大きく変化し、この3つのピークでは変化しているプロテオームが異なるため、違うメカニズムで脳年齢が変化
https://www.nature.com/articles/s43587-024-00753-6
プロテオミクスは、脳の老化バイオマーカーを明らかにし、脳の老化に伴う変化を識別することを可能にする。 我々は、健常成人10,949人のマルチモーダル脳画像データを活用し、脳老化の指標である脳年齢差(BAG)を推定した。 2,922個のタンパク質について、4,696人の参加者を対象としたプロテオームワイド関連解析により、BAGと有意に関連する13個のタンパク質が同定され、ストレス、再生、炎症が関与していることが示された。 ブレビカン(BCAN)(β=-0.838、P=2.63×10-10)と成長分化因子15(β=0.825、P=3.48×10-11)は、認知症、脳卒中、運動機能と最も有意な複数の関連を示した。 BCANの調節異常は複数の皮質および皮質下構造に影響を与えた。 メンデルランダム法は、BCANとBAGの因果関係を支持した。 我々は、脳加齢に伴う血漿プロテオームの起伏に富んだ変化を明らかにし、57歳、70歳、78歳における脳加齢に関連した変化のピークをプロファイリングした。 我々の研究結果は、脳老化の血漿プロテオーム・ランドスケープを明らかにし、脳疾患のバイオマーカーを突き止めた。
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