スーパーエイジャーうんぬん
Brain structure and phenotypic profile of superagers compared with age-matched older adults: a longitudinal analysis from the Vallecas Project
Garo-Pascual, Marta et al.
The Lancet Healthy Longevity, Volume 4, Issue 8, e374 - e385, 2023
背景
通常、認知能力、特に記憶力は加齢とともに低下する。しかし、しばしばスーパーエイジャーと呼ばれる、30歳若い人と同等の記憶機能を持ったまま晩年を迎える人もいる。我々は、スーパーエイジャーの脳構造を明らかにし、この表現型に関連する人口統計学的因子、ライフスタイル因子、臨床的因子を同定することを目的とした。
方法
2011年10月10日～2014年1月14日に募集したVallecas Project縦断コホートから、79.5歳以上の認知的に健康な参加者を、遅延言語エピソード記憶スコアに基づいて選択した。参加者は、Free and Cued Selective Reminding Testと3つの非記憶テスト（15項目のBoston Naming Test、Digit Symbol Substitution Test、Animal Fluency Test）で評価された。参加者は、自由想起テストと手がかり選択想起テストにおいて50～56歳の平均値以上、3つの非記憶テストにおいて年齢と教育レベルの平均値の1標準偏差以上であればスーパーエイジャー、自由想起テストと手がかり選択想起テストにおいて年齢と教育レベルの平均値の1標準偏差以内であれば典型的な高齢者に分類された。縦断的解析には、プロトコールに従って最大6年間の追跡調査から得られたデータが用いられた。
調査結果
64人のスーパーエイジャー（平均年齢81-9歳；女性38人[59％]、男性26人[41％]）および55人の典型的な高齢者（82-4歳；女性35人[64％]、男性20人[36％]）を対象とした。経過観察回数の中央値は、スーパーエイジャーで5-0回（IQR 5-0-6-0）、典型的高齢者で5-0回（4-5-6-0）であった。スーパーエイジャーは、内側側頭葉、コリン作動性前脳、運動視床において、横断的に高い灰白質容積を示した。縦断的には、スーパーエイジャーは、典型的な高齢者よりも、特に内側側頭葉の灰白質の萎縮が緩やかであった。89の人口統計学的、生活習慣的、臨床的予測因子を含む機械学習による分類では、運動頻度に群間差がないにもかかわらず、運動速度が速く、精神的健康が良好であることが、スーパーエイジャーを最も区別する因子であることが示された。スーパーエイジャー群と典型的高齢者群における認知症血中バイオマーカーの濃度がほぼ同じであることから、群間差は典型的な加齢に伴う記憶喪失に対するスーパーエイジャー固有の抵抗性を反映していることが示唆された。
解釈
認知症予防に関連する因子は、加齢に伴う記憶力低下や脳萎縮に対する抵抗力にも関連しており、スーパーエイジングと運動速度との関連は、記憶機能を90代まで維持する方法に関する新たな知見を提供する可能性がある。
https://www.jneurosci.org/content/42/45/8587
解剖。SuperAgersは、Normal Elderlyに比べて、II層ERCにおけるアルツハイマー病関連神経原線維変化（stereologically quantified neurofibrillary tangles）が有意に少なかった（p < 0.05）。ノースウェスタン大学スーパーエイジング研究プログラムでは、スーパーエイジャーと呼ばれる、少なくとも20〜30歳年下の人と同程度の優れた記憶力を示す80歳以上のユニークな人々を研究している。 本研究では、SuperAgersは、認知的に平均的な同年齢の人たちや、健忘性の軽度認知障害のある人たち、そして驚くべきことに、20～30歳若い人たちと比べても、ERCにより大きく健康なニューロンを保有していることを示した。 我々は、ERCニューロンがより大きいことが、スーパーエイジングの生物学的特徴であると結論づけた。
Garo-Pascual M, Zhang L, Valentí-Soler M, Strange BA. Superagers Resist Typical Age-Related White Matter Structural Changes. J Neurosci. 2024 Jun 19;44(25):e2059232024. doi: 10.1523/JNEUROSCI.2059-23.2024. PMID: 38684365; PMCID: PMC11209667.
典型的な高齢者に比べてスーパーエイジャーでは白質の微細構造が良好に保たれていることから、スーパーエイジャーの卓越した記憶能力を支えるメカニズムとして、加齢に伴う脳構造の変化に対する抵抗性が支持される
57，70，78の変化に抵抗できた
Liu, WS., You, J., Chen, SD. et al. Plasma proteomics identify biomarkers and undulating changes of brain aging. Nat Aging (2024). https://doi.org/10.1038/s43587-024-00753-6
老化は44，60で急にやってくる 免疫調節や糖質代謝は60歳の移行期に、心血管疾患、脂質、アルコール代謝は40歳の移行期に変化
Shen, X., Wang, C., Zhou, X. et al. Nonlinear dynamics of multi-omics profiles during human aging. Nat Aging 4, 1619–1634 (2024). https://doi.org/10.1038/s43587-024-00692-2
＊関連して、先日、加藤一二三さんに取材をしたところ、常に最善手を研究してきた、ということとともに、加藤さんはカトリック信者でもあるため「達成できたことは神に感謝、できなかったことは神の哀れみにゆだねなさい」という教えを大切にしているとのことでした。無邪気に好きなものを追求することと同時に葛藤を手放すという精神的なことも「スーパーエイジャー」に関わるでしょうか。
具体的に因果的研究は奨められていないと思いますが、十分にあると思います
精神的健康という意味で
たぶん遺伝要因を含めて
APOEε４をついで持てばどうやっても
スーパーエイジャー（SuperAgers）は、80歳以上でありながら、20～30歳若い人々と同等の認知機能や記憶力を維持している高齢者を指します。彼らの心理的特徴や傾向に関する研究は、加齢に伴う認知機能の維持や向上に役立つ知見を提供しています。以下に、スーパーエイジャーの心理傾向に関する主な研究を紹介します。
1. 脳の構造と心理的健康
スペインのマドリード工科大学の研究では、スーパーエイジャーは一般的な高齢者と比較して、脳の灰白質の萎縮が少なく、運動速度が速く、精神的健康状態が良好であることが示されました。特に、内側側頭葉の灰白質の維持が認知機能の保持に寄与しているとされています。
2. 感情処理と脳の活性化
ハーバード大学の研究によれば、スーパーエイジャーの脳は、強い感情と結びついている領域がより発達していることが示されています。これは、彼らが新しいことや難しいことに挑戦し、感情を強く動かす経験を積極的に求める傾向があることを示唆しています。
3. ポジティブな加齢観と記憶力
コロンビア大学の研究では、年齢に対するポジティブな認識を持つ高齢者は、記憶力が高く、ストレスに対する過剰な反応が少ないことが示されています。これは、スーパーエイジャーが「年だから無理」という固定観念にとらわれず、自分の能力と可能性を信じ、アクティブに行動する傾向と一致しています。 David Weiss, On the Inevitability of Aging: Essentialist Beliefs Moderate the Impact of Negative Age Stereotypes on Older Adults’ Memory Performance and Physiological Reactivity, The Journals of Gerontology: Series B, Volume 73, Issue 6, September 2018, Pages 925–933, https://doi.org/10.1093/geronb/gbw087
4. 挑戦志向と脳の活性化
マサチューセッツ総合病院の調査によると、スーパーエイジャーは、クロスワードやパズルゲームなどの認知的挑戦よりも、強い感情と結びついた活動に積極的に取り組む傾向があります。これは、彼らが自分の限界を少し超えるような挑戦を好み、脳の高次機能に関連する領域を活性化させていることを示しています。
これらの研究は、スーパーエイジャーがポジティブな加齢観を持ち、新しい挑戦に積極的であり、感情的な豊かさを維持していることが、認知機能の維持に寄与している可能性を示唆しています。これらの心理的傾向を理解することで、一般の高齢者における認知機能の維持や向上に向けた介入策の開発に役立つと考えられます。
Garo-Pascual, Marta et al.
The Lancet Healthy Longevity, Volume 4, Issue 8, e374 - e385, 2023
背景
通常、認知能力、特に記憶力は加齢とともに低下する。しかし、しばしばスーパーエイジャーと呼ばれる、30歳若い人と同等の記憶機能を持ったまま晩年を迎える人もいる。我々は、スーパーエイジャーの脳構造を明らかにし、この表現型に関連する人口統計学的因子、ライフスタイル因子、臨床的因子を同定することを目的とした。
方法
2011年10月10日～2014年1月14日に募集したVallecas Project縦断コホートから、79.5歳以上の認知的に健康な参加者を、遅延言語エピソード記憶スコアに基づいて選択した。参加者は、Free and Cued Selective Reminding Testと3つの非記憶テスト（15項目のBoston Naming Test、Digit Symbol Substitution Test、Animal Fluency Test）で評価された。参加者は、自由想起テストと手がかり選択想起テストにおいて50～56歳の平均値以上、3つの非記憶テストにおいて年齢と教育レベルの平均値の1標準偏差以上であればスーパーエイジャー、自由想起テストと手がかり選択想起テストにおいて年齢と教育レベルの平均値の1標準偏差以内であれば典型的な高齢者に分類された。縦断的解析には、プロトコールに従って最大6年間の追跡調査から得られたデータが用いられた。
調査結果
64人のスーパーエイジャー（平均年齢81-9歳；女性38人[59％]、男性26人[41％]）および55人の典型的な高齢者（82-4歳；女性35人[64％]、男性20人[36％]）を対象とした。経過観察回数の中央値は、スーパーエイジャーで5-0回（IQR 5-0-6-0）、典型的高齢者で5-0回（4-5-6-0）であった。スーパーエイジャーは、内側側頭葉、コリン作動性前脳、運動視床において、横断的に高い灰白質容積を示した。縦断的には、スーパーエイジャーは、典型的な高齢者よりも、特に内側側頭葉の灰白質の萎縮が緩やかであった。89の人口統計学的、生活習慣的、臨床的予測因子を含む機械学習による分類では、運動頻度に群間差がないにもかかわらず、運動速度が速く、精神的健康が良好であることが、スーパーエイジャーを最も区別する因子であることが示された。スーパーエイジャー群と典型的高齢者群における認知症血中バイオマーカーの濃度がほぼ同じであることから、群間差は典型的な加齢に伴う記憶喪失に対するスーパーエイジャー固有の抵抗性を反映していることが示唆された。
解釈
認知症予防に関連する因子は、加齢に伴う記憶力低下や脳萎縮に対する抵抗力にも関連しており、スーパーエイジングと運動速度との関連は、記憶機能を90代まで維持する方法に関する新たな知見を提供する可能性がある。
https://www.jneurosci.org/content/42/45/8587
解剖。SuperAgersは、Normal Elderlyに比べて、II層ERCにおけるアルツハイマー病関連神経原線維変化（stereologically quantified neurofibrillary tangles）が有意に少なかった（p < 0.05）。ノースウェスタン大学スーパーエイジング研究プログラムでは、スーパーエイジャーと呼ばれる、少なくとも20〜30歳年下の人と同程度の優れた記憶力を示す80歳以上のユニークな人々を研究している。 本研究では、SuperAgersは、認知的に平均的な同年齢の人たちや、健忘性の軽度認知障害のある人たち、そして驚くべきことに、20～30歳若い人たちと比べても、ERCにより大きく健康なニューロンを保有していることを示した。 我々は、ERCニューロンがより大きいことが、スーパーエイジングの生物学的特徴であると結論づけた。
Garo-Pascual M, Zhang L, Valentí-Soler M, Strange BA. Superagers Resist Typical Age-Related White Matter Structural Changes. J Neurosci. 2024 Jun 19;44(25):e2059232024. doi: 10.1523/JNEUROSCI.2059-23.2024. PMID: 38684365; PMCID: PMC11209667.
典型的な高齢者に比べてスーパーエイジャーでは白質の微細構造が良好に保たれていることから、スーパーエイジャーの卓越した記憶能力を支えるメカニズムとして、加齢に伴う脳構造の変化に対する抵抗性が支持される
57，70，78の変化に抵抗できた
Liu, WS., You, J., Chen, SD. et al. Plasma proteomics identify biomarkers and undulating changes of brain aging. Nat Aging (2024). https://doi.org/10.1038/s43587-024-00753-6
老化は44，60で急にやってくる 免疫調節や糖質代謝は60歳の移行期に、心血管疾患、脂質、アルコール代謝は40歳の移行期に変化
Shen, X., Wang, C., Zhou, X. et al. Nonlinear dynamics of multi-omics profiles during human aging. Nat Aging 4, 1619–1634 (2024). https://doi.org/10.1038/s43587-024-00692-2
＊関連して、先日、加藤一二三さんに取材をしたところ、常に最善手を研究してきた、ということとともに、加藤さんはカトリック信者でもあるため「達成できたことは神に感謝、できなかったことは神の哀れみにゆだねなさい」という教えを大切にしているとのことでした。無邪気に好きなものを追求することと同時に葛藤を手放すという精神的なことも「スーパーエイジャー」に関わるでしょうか。
具体的に因果的研究は奨められていないと思いますが、十分にあると思います
精神的健康という意味で
たぶん遺伝要因を含めて
APOEε４をついで持てばどうやっても
スーパーエイジャー（SuperAgers）は、80歳以上でありながら、20～30歳若い人々と同等の認知機能や記憶力を維持している高齢者を指します。彼らの心理的特徴や傾向に関する研究は、加齢に伴う認知機能の維持や向上に役立つ知見を提供しています。以下に、スーパーエイジャーの心理傾向に関する主な研究を紹介します。
1. 脳の構造と心理的健康
スペインのマドリード工科大学の研究では、スーパーエイジャーは一般的な高齢者と比較して、脳の灰白質の萎縮が少なく、運動速度が速く、精神的健康状態が良好であることが示されました。特に、内側側頭葉の灰白質の維持が認知機能の保持に寄与しているとされています。
2. 感情処理と脳の活性化
ハーバード大学の研究によれば、スーパーエイジャーの脳は、強い感情と結びついている領域がより発達していることが示されています。これは、彼らが新しいことや難しいことに挑戦し、感情を強く動かす経験を積極的に求める傾向があることを示唆しています。
3. ポジティブな加齢観と記憶力
コロンビア大学の研究では、年齢に対するポジティブな認識を持つ高齢者は、記憶力が高く、ストレスに対する過剰な反応が少ないことが示されています。これは、スーパーエイジャーが「年だから無理」という固定観念にとらわれず、自分の能力と可能性を信じ、アクティブに行動する傾向と一致しています。 David Weiss, On the Inevitability of Aging: Essentialist Beliefs Moderate the Impact of Negative Age Stereotypes on Older Adults’ Memory Performance and Physiological Reactivity, The Journals of Gerontology: Series B, Volume 73, Issue 6, September 2018, Pages 925–933, https://doi.org/10.1093/geronb/gbw087
4. 挑戦志向と脳の活性化
マサチューセッツ総合病院の調査によると、スーパーエイジャーは、クロスワードやパズルゲームなどの認知的挑戦よりも、強い感情と結びついた活動に積極的に取り組む傾向があります。これは、彼らが自分の限界を少し超えるような挑戦を好み、脳の高次機能に関連する領域を活性化させていることを示しています。
これらの研究は、スーパーエイジャーがポジティブな加齢観を持ち、新しい挑戦に積極的であり、感情的な豊かさを維持していることが、認知機能の維持に寄与している可能性を示唆しています。これらの心理的傾向を理解することで、一般の高齢者における認知機能の維持や向上に向けた介入策の開発に役立つと考えられます。
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