笑うと頭の中で何がおきるか

そうですね、頭の中ではさまざまなことが起こります。一番だいじなのは「報酬系」の活性化ですかね。「報酬系」というのは脳の奥(腹側被蓋というところ)から快感に強くかかわるところ(側坐核)を経由して、おでこのあたりの脳(前頭葉)など脳全体に広がるドーパミン神経系です。笑うときの楽しい気分は、この報酬系が活性化していることによります。
ちょっとおもしろいのは、この報酬系、「面白い!」と思ったときだけに活性化するわけではないことです。たとえば好きな芸人さんが出てきたとき、別に面白いことをいっているわけでもないのに、うれしくなって、口元が緩んだりしませんかね?あるいは、友達と話せると思っただけでワクワクするとか。
つまり、報酬系は、これからいいことがおきそうという予感だけでも活性化するんですね。それで笑えたりもします。これを報酬予測と言います。
一方でね、笑う気満々だったのに、ちぃっともおもしろくない、笑いが凍り付くときもありますよね。この時は、報酬予測と実際の報酬の差を計算して、報酬系の活動が止まってしまうんですね。これが積み重なると飽きていく。芸人さんはここを乗り越えなければいけないんで大変なんですね。
さて、顔は笑ってるけどちっとも面白くない時、目が笑っていない。眼輪筋という目のしわを作る筋肉が動かない。口角を上げる筋肉(大頬骨筋)は動いて口は笑っているけれど、目は笑っていない。逆に、本当に笑っているときは、口も目も笑う。こういう筋肉への命令も頭の中、脳幹などから行われます。本当の笑いは頭の中で筋肉への命令と報酬系が結びついていますが、うそ笑いは報酬系の活動とはあまり結び付いていないんですね。
ほかにも、笑うことで、頭の中などでエンドルフィンという物質が分泌され、痛みを和らげたり、リラックス効果をもたらします。また、ストレスに関係するコルチゾール(ストレスホルモン)を分泌させる命令が減り、ストレスが軽減されます。免疫力も上がります。
笑うと心拍数が少し上がり、血流が良くなり、筋肉が弛緩します。これは、軽い運動をしたときのような効果があり、健康にも良いとされています。
さきほど、うそ笑いは頭の中で報酬系とあまり結びついていないと言いましたが、ちょっとは結びついていて、笑い顔を作るだけで、ドーパミンやエンドルフィンの分泌がちょっと増し、コルチゾールが低下したりします。鉛筆などを横にくわえるだけで、読んでいる本が余計に面白くなるなんている報告もあるので、とりあえず、笑っとくのはわるくないですね。目のまわりの筋肉もトレーニングすると緩められ、余計に効果的ですし。

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