インコの前脳には人間の言語運動皮質と類似した機能的表現が存在する

本研究は、人間の音声言語生成に関わる大脳皮質ネットワークが、調音パラメータや音の高さといった音声的特徴によって組織化されていることを出発点とし、これと同様の構造が他の動物にも存在するかを検証したものである。著者らは、柔軟な発声が可能な小型のオウムであるセキセイインコ(Melopsittacus undulatus)の発声回路を対象に、高密度シリコンプローブを用いて前脳部位である前弓状核中央部(AAC)の活動を記録した。AACは発声に関わる脳幹運動ニューロンへ直接投射しており、歌のスペクトル特性を反映した機能的な発声運動マップが形成されていることが明らかとなった。対照的に、発声学習能力が限定的なキンカチョウの同様の脳部位ではこのような組織化は確認されなかった。さらにAACでは、ハーモニック構造や広帯域エネルギーといった異なる音声的特徴が表現されており、個々のニューロンが異なる音高に選択的に反応するなど、音高の秩序ある表現も観察された。これらの結果から、セキセイインコの脳内には人間の言語運動皮質と類似した機能的表現が存在することが示され、同種が音声運動制御の研究や言語障害治療のモデル動物として有望であることが示唆された。
https://www.nature.com/articles/s41586-025-08695-8

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