年齢を重ねると月日が早く感じられるのはナゼ？

人間には「内的時計（internal clock）」と呼ばれる脳内の時間を測る仕組みがあります。これは視床下部や小脳などが関わっており、私たちが「今何秒くらい経ったかな？」と感じるときに働いています。体にある時計のような仕組みとしては体内時計が有名で、特に視交叉上核にある約24時間周期で概日リズムを制御する仕組みが有名ですが、実は各臓器、各細胞に無数に存在しています。
このうち、主観的な時間感覚にかかわる生物時計を内的時計とよび、神経伝達物質（ドーパミンなど）や脳の代謝活動と密接に関わっています。
ドーパミンという神経伝達物質は、「注意力」や「快感」「新奇性の感知」に関係しています。若い頃はドーパミン分泌が活発なので、周囲の変化や刺激に敏感になり、時間を細かく感じやすくなる。加齢に伴ってドーパミン分泌が減少すると、時間に対する「集中力」や「注意力」も下がり、結果として時間が“短く”感じられるのです。若いときほど神経活動が活発で、情報の処理速度も速いため、「1秒間に感じる出来事の数」が多くなります。その結果、1分や1時間が“長く”感じられる傾向にあります。
一方、年齢を重ねると、神経細胞の働きが緩やかになり、情報処理の速度が遅くなります。それによって、「1秒の中で起きている変化」や「刺激の数」が少なく感じられ、時間の流れが早く感じやすくなるのです。
年齢とともに体全体の基礎代謝が落ちることも関係します。脳のエネルギー消費量も下がり、活動全体が“スロー”になります。エネルギーの流れが少なくなると、「体感的な時間」も早く流れていくように感じることがあります。体を「ゆっくり動かすと」「時間があっという間に過ぎた」と感じやすくなるという報告もあります。せかせか動くと時間が進まないんですね。

子どものころは毎日が新しい発見の連続ですが、大人になると日常がルーティン化していきます。新しい体験が多いと、記憶に残る情報量が多く、時間が長く感じられる。反対に、毎日が同じようなことの繰り返しだと、記憶が「薄く」なり、過ぎた時間があっという間に感じられます。このため、体感的に時間が短く感じるようになります。
ジャネーの法則もよく知られています
人間は「生きてきた年数に対する1年の割合」で時間を感じているという理論です。
例えば、5歳の子どもにとっての1年は「人生の1/5」。
一方で、50歳の大人にとっての1年は「人生の1/50」。
つまり、年齢が上がるにつれて、1年が相対的に短く感じられるようになるということです。
記憶の総量に占める一年の割合が歳をとると小さくなって、早く感じるという説明もおこなわれます