虐待を受けた子どもたちは6歳時点で右海馬が小さく、少なくとも思春期までその傾向が続く

以下は、Cambridge University Pressの学術誌『Psychological Medicine』に掲載された論文「Childhood maltreatment and the structural development of hippocampus across childhood and adolescence」の要約です。

🧠 研究の背景と目的
子ども時代の虐待（Childhood Maltreatment: CM）は、精神疾患のリスク要因とされており、特に記憶や感情調整に関与する脳の海馬（hippocampus）の構造変化との関連が指摘されています。本研究は、CMが子どもから青年期にかけての海馬の発達にどのような影響を与えるかを、MRIを用いた縦断的な観察で明らかにすることを目的としています。

🔬 研究方法
対象者: 6〜12歳の子どもを対象に、親および本人からの報告に基づいてCMの有無を評価。

手法: MRIによる海馬の体積測定を複数回実施し、混合効果モデルを用いて年齢とCMの影響を分析。

調整要因: うつ病の診断歴や海馬体積に関連する遺伝的リスクスコアを考慮。
ケンブリッジ大学出版局
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📊 主な結果
右海馬の体積は、CMの曝露が高い子どもで一貫して小さく、青年期を通じてその差が持続しました。

この関連は、うつ病の有無や遺伝的要因を調整した後でも有意に認められました。

年齢や性別との交互作用は統計的に有意ではありませんでした。

🧾 結論と意義
本研究は、子ども時代の虐待が右海馬の発達に持続的な負の影響を及ぼすことを示しました。この影響は、うつ病の発症や遺伝的要因とは独立しており、CMが脳の構造的発達に長期的な影響を与える可能性を示唆しています。これにより、早期の介入や支援の重要性が再認識されます。